第11話
家から逃げ出してからしばらくして、祖母の家から学校に通うようになった。でも、この学校生活は登下校、いつ待ち伏せされて家に戻されるかビクビクしていた。
この頃の記憶は曖昧で、どのくらいの期間こんな生活をしていたのかあまり覚えていない。
ただ、一つ言えることは、当時僕自身がとても精神的不安定な状態だったんだと言うことはわかっている。
よく問題行動を起こして、頻繁に先生から連絡がきていたし、電話で先生ともよく話していた記憶がある。
開放はされたはずなのに、本当の開放はされていない。もちろん兄弟とも離れ離れになっている状態だし、母親も今後どうしていくのか難航している様子だった。
でも、悪い思い出ばかりではない。逃げ出してから学校に通う生活が始まり、初めて夏休みになった。母親と二人でむかえる夏休み。
夏休みに母親と居れるのなんて何年ぶりか。
今まで僕らの夏休みは、父親の実家に連れて行かれ、そのまま夏休みの終わりまで過ごす。父親も仕事で居ないから、ほとんど夏休みは兄弟とテレビゲームをして過ごした。だから夏休みは本当に嫌いだった。そこには母親はついてこなかったからだ。
今になって考えれば異常だったと思うし、父方の祖母も孫には関心を持たない人だったから一ヶ月ちょい放置されていた。
僕は夏休みのほとんどを母親と二人で釣りをしていた。雨の日以外は毎日通ったと思う。
赤虫を買って、延べ竿でクチボソやテナガエビを釣って楽しんだ。自分で釣るテナガエビは唐揚げにするととんでもなく美味かった。
水槽で自分で釣った魚を飼ってみたり、もんじゃ屋にもよく通った。
本当に楽しかったし、やっぱり今でももんじゃ屋が大好きだし、もちろん魚釣りをするのも大好きで、子供にも魚釣りを教えている。
楽しかった思い出というのは、悪い思い出だったり、悲しい思い出のような負の記憶とは違って、何年、何十年と年月を重ねても好きでいられる。
ただ、楽しいことがあるからこそ、辛いこともあるわけで、長いことはこの生活は続かなかった。
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