第10話
僕の人生の転機はどこだったのか?たぶん、小学校4年生だった時のことが人生のターニングポイントだったと思う。
あれはいつもよりも少し激しい夫婦喧嘩があった時だった。
母親から「もう限界だよ」とその日こっそり言われた。
その日の夜は色々なことを考えた。夜こっそり出ていこうかとも思ったし、どうしようか一人で考えていた。この時の想像は、今でも覚えているから不思議である。もしかしたら、そう思ってただろうと記憶を捏造してるかもしれないかもしれないが、それ程覚えている気がする。
結局何も決まらず行動できないまま朝を迎えていた。眠れなかったかというとそんなこともなくていつの間にか眠っていた。
とにかく、父親と母親を引き離さないと喧嘩が始まってしまうので、父親と兄弟と一緒に自転車で30分程で着くデパートへと向かった。
もちろん母親は家で一人で留守番だ。
当時のデパートは、新作のゲームが無料で遊べるコーナーがあった。今でこそ、ダウンロードをして体験版が少し遊べるが、当時はそんなものはないので、実際にデパートやゲーム屋でプレイをして買わせるスタイルだった。
僕ももれなくそこでゲームができる所で並んで、遊ぼうと思った。なんのタイミングだったのか、父親が他の兄弟を連れて、デパート内の他のフロアに買い物に行った。
僕は、「ここだ」と思った。思ったと同時に行動に出た。デパートから脱走したのだ。
とにかく急いでエスカレーターを降りて、家へと向かった。本当は自転車を使いたかったが、自転車が無くなればデパートから脱走したのがバレると思い、走って向かった。とにかく必死に走った。途中歩くこともあったが、心臓バクバクしながら死物狂いで走った。
家に着くなり、母親に「一緒に家を出よう」と伝えた。母親は一瞬戸惑っていた。今になればわかるが、当時は自分のことや後先など考えてもないのでわからなかった。もちろん兄弟のことだ。
僕は、兄弟を捨ててまでも逃げ出すことに執着していた。本当に今思い返せばクズ人間だと思う。
きっと母親は辛い選択だったと思うが承諾してくれた。
二人でバスに乗り、電車に乗り、またバスに乗って祖母の家へと向かった。捕まるんじゃないかと、ものすごく怖かった。祖母の家に着いてもその恐怖は抜けなかった。
しばらくして、母親が電話をしていた。「もう帰らない」とか「兄弟を渡せ」といった話だったと思う。ブルブルと体が震えて自分のやった行動、もう後戻りができない恐怖に押し潰されそうになった。
そんな僕を祖母は抱き締め、インスタントの温かいコーンスープを作ってくれて飲ませてくれた。
僕は、安堵感かなんなのか涙していた。
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