第9話

 現状をよくするためにはどうしたらいいか。今ある苦しいことからどうやったら解放されるのか。

 とにかくあの事以来、自分でなんとかしないといけないという想いがすごく強くなっていた。なによりも、母親自身もあの日以来吹っ切れたのか、母親から一緒に出て行こうと言われることが多くなっていた。

 どうしたらいいのか、子どもながらにものすごく毎日悩んでいた。一緒に出て行こうと言われたタイミングで、僕が「わかった」と言えば間違いなく行動していただろうと思う。

 だけど、それよりも連れ戻される恐怖の方が強くて、首を縦にふることはできなかった。

 というのも、あまり触れなかったが、引っ越して以来、父親からの暴力が酷かった。

 原因の一つには、夫婦喧嘩の仲裁に入り、母親の味方をすることが気に食わなかったのだと思う。

 殴られて、頭をゲンコツされ、タンコブができた頭を笑ってさすっていた自分は、今考えると異様な子どもだったと思う。これは他人から怒られることに対しても同じ反応をしてしまうようになっていた。

 小学校低-中学年位の子どもであれば、怒られて泣くのが普通だと思う。僕はというと、なぜか笑ってごまかそうと、とにかく嫌な時は笑っていた。

 この習慣だけは、大人になった今も抜けずにいる。怒っている人からすればさぞ不快だと思う。実際にこれで揉めたこともあった。

 だけど、意識してもこれは直らなかった。心の中では反省してても笑顔になってしまう。

 話は脱線したが、とにかく暴力に対して恐怖心を抱いていたので、なかなか家を出るという行動に踏み出せなかった。

 幸いにも、僕以外の兄弟は暴力を振るわれていなかったのも行動に踏み出せない一つだったのかもしれない。

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