第7話 俺が〇〇だよ! 

 これも校外学習かなんかの日のことでした。


 僕らの学校の生徒、約500人が電車移動しました。

 さすがに朝のラッシュ時は避けましたね。


 これもどこに行ったんだろう…埼玉だったかな…。


 帰りの電車でのことです。


「なんだお前ら、大勢でじゃまなんだよ! 」

 いかにも…という感じの男子高校生が3人くらいの子分のような同じ制服の学生をつれて乗り込んできました。


 ちなみに僕らの制服はブレザーでしたが、彼らは学ランを着ていました。


 勿論彼等は学ランのボタンなどはしておらず、バッグもペッチャンコで革靴の踵はちゃんと踏みつぶされていました。


 いきがっていましたね、気持ちはわかります。

 知らない制服のにーちゃんが大勢で乗り込んで車内を狭くしているのですからね…。


 我々は無視をしていました。

 でも学ランの生徒はいわゆる「ガン」をつけてきています。


「堀…バカ達に目を合わせるなよ…」

 柔道部の伊藤が小声で僕に言いました。


 本当、絡まれたら

「バカみたい」

 なのでみんなは彼らを見ないようにしていました。


「じゃまなんだよ、お前らよ! 」

 不運にも空手部の山下に向かって学ラン君言いました。


「うっせえな…」

 呆れ顔の山下。


「なんだお前ら…じゃまで狭えんだよ! 」

 それはわかっているんです、こちらもね。


「先公呼んでこいや!」


 ああ…言っちゃった…


 先公、せんこうと読みます。

 ほめられた言い方ではありません。

 そんなこと先生の前で言ったら…

 想像もできません…

 怖いですね。


 いつも酒くさい三井先生、母校の教師になった大畑先生が運よく…運悪く同じ車両の中にいました。


「なんだ…?」

 状況はわかりきっているくせに、そんなことをつぶやきながらニコニコして生徒を押し分け、

身長180センチ以上、体育の教師のようで社会科の大畑先生がやってきます。


「へへ…」

 こちらも気味悪く笑いながら授業中でも薄茶色いサングラスをし、街で見かけたら絶対に教師には見えない、竹刀をもって講義をする英語の三井先生も来ました。


 教師のイメージとはほど遠い二人を見てちょっと焦る学ラン君。

 

 なんかこれからのことが想像できるので、僕は目をそらしていました。


 乾いた音が二度しました。

 大畑先生、いつも気合が入ったときに大きな両手を胸の前で二度たたきます。

 ニコニコしていたからさらに不気味です。


「来たぜ!」


 大畑先生の大きな声が車内に響きました。


「俺が『先公』だよ!! 」


 以後省略します。



 男子校哀歌、終わります。


        了

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男子校哀歌 @J2130

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