兄様は美少女たちが帰ってこなくてお怒りのご様子


「エリザベートはどうした!? どうして戻ってこない!? というか他の兵士たちも戻ってないのはどうしてだ!?」


 あちこちで城の人間が騒がしく働いている中。城内でリースの怒った声が響き渡る。それも仕方がないことかもしれない。彼がミアとイズナを連れ戻すために遣わしたエリザベートたちが戻ってこないのだから。


「おかしいぞ……おかしい。ミアもイズナも、俺が戻ってきてくれと思っていると知ったら喜んで来るはずなのだが……。ま、まさか!? カイルのやつ、うまいことあいつらをたぶらかして帰れないようにしているんじゃないか!?」


 自分が嫌われているとは微塵も思わず、全てをカイルのせいにするリースの様子を、上層部の部下たちは冷ややかな目で見ていた。どうしてそんなおめでたい発想をできるのか心底不思議だなと思いながらも、ここで彼を怒らせてしまえば自分のクビが危ない。


 それに、こいつにうまく付け入ればさらなる出世も見込めるのではないか。いや、それだけではなく、帝国のトップに立つことも夢じゃない……。そんな野心を持った人間しかいないので、誰も彼に正論を言うこともなかった。


「そうですね、まさにその通りでございます!」

「あなた様の魅力に気づかない二人が悪いのです!」

「リース様こそ最高の軍師なのですから!」


 それどころか、無責任に彼の根拠なき自信を助長させるようなことを平気で言ってしまう。故に、彼が間違えていることに気づく機会は全くなかったのだ。


「そうだよな! よし、なら俺が直々出向いてやるとするか」


「そ、それはダメですリース様! 今は重要な局面ですから!」

「あなた様のお力がなければ乗り切れません!」

「勝利という手土産とともに迎えに行くべきです!」


 そして、リースが出向くというのは必死に静止した。なにせ、行ったら確実に追い返されるし、リースがふてくされるのが目に見えてわかるからだ。そんなことになったら自分の出世が遠のいてしまう。だからこそ、ここで引き止めてこの裸の王様をとことん利用してやろうというこんたんだ。


「そ、そうか……それもそうだな! よし、では早速作戦会議をするぞ! さてさて……よし、ここはこうせめて、こうやれ! 俺はここで指示を出してやるからな!」


「おお、すごいです!(おいおい……やべぇよ)」

「さすが!(か、勝ち目がない……)」

「天才ですね!(やっぱ出世諦めようかな……)」


 全く勝機を感じさせない無能な作戦を考える上司におののきながら、今日の部下たちはなんとかやりくりをするのだった。


――――――――――

読んでいただきありがとうございます!

もし面白ければ、★×3とフォローお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大変優秀(笑)な兄様が「お前がいるから真の実力者である俺が活躍できないんだ!大した仕事もしていないお前は出て行け!」と仰るので、僕は田舎で美少女たちと毎日ぐーたら過ごすことに決めました 倉敷紺 @tomogainai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ