リアルライフ

鈴木まる

第1話 お別れ

ああ、色んな思い出があるなぁ。


秋の三日月は、とてもセンチメンタルな気分にさせてくる。


あなたと初めて出会ったのは、中学生の時。受験を控えていたけれど、あなたとの時間を私は削ることができなかった。


高校生になって、人間関係が広がった。バドミントン部に入って、毎日放課後は練習に費やした。でも、あなたが一番大切だったから、夜遅くても朝早くても、一緒に過ごす時間を作った。


大学生になったら、案外、自分の時間を作るのが前よりも簡単になった。バイトをして、自由に遣えるお金も増やすことができた。サークルの飲み会も楽しかったけれど、やっぱり一番はあなた。沢山の想いをあなたと共有することができて、幸せだった。


社会人になったら、お金は増えたけれど、時間は足りなくなった。毎日毎日、仕事ばかりだった。ヘトヘトになって家に帰ると、スマホ越しのあなたの笑顔に癒やされた。


でも、もうあなたとはおしまい。私は次のステップへ進まなくてはいけない。あなたといては、きっと、私の望みは叶わない。


さようなら…私の愛しい人。





彼女は潤んだ瞳で、コミックと自作、他作入り混じる大量の夢漫画同人誌を、人目を避けてこっそりと指定のごみ捨て場へ出した。


もうすぐアラサーの、結婚願望のある彼女。二次元の恋人に現を抜かしていては、きっと婚活はうまくいかない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

リアルライフ 鈴木まる @suzuki_maru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ