3.歌舞伎町を10センチヒールで闊歩する

 私は、身長が百六十八センチある。スレンダーな体型で派手な顔立ち。その特性を生かして、華やかな洋服を着て十センチのヒールを履いて歌舞伎町を闊歩していた。


 この日は、女友達との待ち合わせまで時間があったので、一人で歌舞伎町を散策していた。すると、 前から、モデル体型の女が歩いてきていた。その目は真っ直ぐと私に向けられていた。


 でかい者同士、華美な服装をして派手なメイクをした者同士が向き合う。


「ふんっ」


 すれ違った時、そんなような相手の声が聞こえた気がする。どちらが格上なのか。一瞬の攻防だった。


 私は、派手ないで立ちで歌舞伎町に存在していたが、千葉県の地味な地域で地味な生活をしている、性格が地味で、陽キャというわけでもないタイプだ。たまたま遊ぶ場所に選んでいたのが歌舞伎町だっただけなのだ。


 ────敗北。


 この街は、素が地味な私の事を用無しだと言っているようだった。

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