【短編】暗殺ギルドを追放された俺、生産職ギルドへ転職しようとするも無能過ぎて旅人になる

夏目くちびる

第1話

「レッドラム、お前はクビ――」



 虫の居所が悪かったから、いつか殺してやろうと思っていたギルドマスターを脊髄反射的に仕留めてしまったが、今際の言葉を聞くにどうやら俺は暗殺ギルドを追放されてしまったらしい。



 理由は、なんだったんだろうな。



 まぁ、いつの間にか顧客や上司に対して何かしらの悪いことをしたのだろう。心当たりがあり過ぎてどれを指してるのか、さっぱり検討もつかないが。



「えーと、金庫のナンバーは何だ。娘の誕生日とかか?」



 別に魔術や体術が得意なワケではないし、そもそも強くすらなかったが、それでも俺がここで稼げていたのは誰よりも独善的で罪悪感がなくて、ついでに学もないから躊躇する事を一切知らないからだろう。



 だから、平気で嘘をつくし人を裏切るし、一瞬の隙をついてぶっ殺してしまう。感情の起伏も少なくて、不規則な生活リズムでも仕事の出来に支障が生まれにくいことも幸運だっただろうか。

 


「うわ、マジで誕生日だ。金庫開けたせいで俺だってバレるかもしれんし、後で娘たちも殺しとこ」



 前にこのゴミの惚気話を聞いておいた甲斐があった。

 貯金の出来ない俺だから、実は明日食う金にも多少困っていたところだ。

 キャッシュは5000万ゴールド程度、宝石を換金すれば一億はあるだろうし、しばらくは保つと思う。



 しかし、アングラとはいえ一端のギルドマスターの資金がたったこれっぽちとはどういうことだろうか。

 何か、資産に変えて家とかに保有してるのか?それとも、土地か株か、あまり金に詳しくない俺ではその程度しか予測出来ない。



 ただ、どうせ殺しは水商売。



 ギルドマスターだって早くに稼いで一生を暮らすつもりだったんだろうし、それなりに溜め込んでいるだろう。

 それに、家族も皆殺しにされるんだ。蓄えが国や銀行に吸収されるくらいなら俺使ってやるさ。



「クソ、死に顔までムカつく男だ」



 死体を跨いで部屋を出る途中、ふと思った俺はその苛つくツラを踏み潰してグッチャグチャにしてやった。

 こうなってくると苦しませられなかった事が心残りだが、これを娘たちに見せつけてそっちが悶える姿を眺めれば少しはストレスも解消されるだろうか。



 つーか、何がレッドラムだよ。だっせぇ二つ名付けやがって。



 元帝国騎士だかクルセイダーだか知らんが、そういうセンスを他人に押し付ける神経ってどんだけ図太いんだよ。

 なんて考えて皮膚をベリベリと捲ったが、張り付いて垂れる白い管にはなんの異常もなかった。ということは、おかしかったのはこいつの脳みそか。



「……って、もう潰れちまって観察できねぇだろうがよ。人体の不思議を俺に教えておけやボケ」



 あぁ、ムカつく。

 俺が蘇生魔術を使えれば、生き返らせてテメーのキンタマでも食わせてやるのに。



 ラスボスなんだから、一行で殺されてんじゃねーっつーの。



 × × ×



 ギルドマスターの家族を皆殺しにした俺は、気ままに旅をして港街の『ウィスク』という場所へ流れ着いた。



 どうやら、ここは色んなメーカーが武器や防具やポーションなんかを作って世界中へ売り出しているらしい。

 港にはデカい商船が多く停泊しているし、マーケット自体が観光地になっているようで露店の数もかなりある。



 しかし、女と肉を買い叩いたせいで資金はとっくに尽きている。

 ここで店をやるのも楽しそうだが、まずはその為の金を稼がなければならない。

 誰か、殺すか?それとも、どっかの企業へ就職してから何かしらの仕事を請け負うか?出来れば、殺し以外の方法で稼ぎたいのだが。



「まぁ、何でもいいか」



 俺は、オフィス街のギルドホールへ向かって紹介状を書いてもらうことにした。これだけ活発に動く街なら、働き手だって募集しているに違いない。

 なるべく楽に、且つ短期間で大金を稼げる仕事が欲しい。魔術は使えないし、勉強も出来ないし、体力を使うのも嫌だけど。



 でも、いっぱい金が欲しい。そんな仕事、寄越せよ。



「ならば、生産職ギルドの大手メーカーはどうですか? 現在、世界中で回復ポーションの需要が上がっているので短期間で稼ぐことも可能です」



 理由を聞くに、各国の冒険者ギルドが未知の大陸へ繰り出す為に多くのポーションを必要としているようだ。

 強力な魔術はそれなりに魔力を使うし、アイテムで節約するってのは合理的な判断だろう。



「でも、俺は錬金術も調剤術も使えない」

「大丈夫です、最新の錬金釜は魔力を送り込むだけでポーションを作ることが出来ます」

「へー、ハイテクなんだな。因みに、1000万くらい稼ぐにはどれくらいかかるんだ?」

「それだけ大きな額ですと、3年くらいでしょうか」



 却下だ。俺の根気が3年も保つワケねぇだろ、何を言っとるんじゃこの女は。



「もっと早く稼ぎたいんだけど」

「スキルがないなら無理です」

「ならさ、姉ちゃん。あんたぶっ殺したい奴とかいるか? そいつ始末するから、俺の代わりに働いてくれよ」

「……急になんですか? 衛兵を呼びますよ?」

「やだ」



 やだからホールのベンチに座って大人しく待っていると、さっきの受付の女が紙を持って俺のところへ来た。

 あれが、紹介書だろうか。しかし、てっきり場内アナウンスか何かで呼び出すモノだと思っていたが、レストランのウェイターみたいにわざわざ運んでくれるとは気が利く。



「チップなんて出さねぇぞ、無一文だ」

「分かってるわよ、貧乏人。それより、あんたマジで人殺しできんの?」



 女は、清潔でお高くとまったような見た目とは裏腹なぶっきらぼうで粗雑な言葉を放った。



「遠い街の暗殺ギルドにいた。聞いてくるってことは、俺の情報がこの世界に存在してないってわかったんだろ?」

「えぇ。でも、そんなギルド聞いたことないわ」

「当たり前だろ。どこの世界に『暗殺やります!』なんて看板掲げてる商売人がいるんだよ。そういうのは地下ではぐれもんがやるんだよ」

「……それで、なんでお金が必要なの? その話を信じるとしても、費用の交渉はするから」

「店を持って生産職ギルドに加入したいんだ。好き勝手に商売して生活したい」



 すると、女は見下したような表情でヒールをコツと鳴らした。



「わかった、なら私の姉を殺して。報酬は500万。ウィスクで店をやるならそれくらいで足りるわ」

「ほーん、まぁいいけどよ。素直に受けるのは釈然としねぇし、しばらくお前の家に住ませてくれ」

「いいわ、あいつをぶっ殺してくれるなら」



 これは、よっぽどだな。



 しかし、そんなにブチギレてるなら自分の手でやっちまえばいいのに。

 こいつ、俺と同じで弱っちいのか。それとも、ターゲットになにか理由があるのか。

 普段は詮索しないのだが、ため息をついて髪を解いて眼鏡を外した姿は妙に俺の好みだったから聞いてみることにした。



「勇者なの、私の姉は」



 どうやら、この女メロの双子の姉であるミラはこの世界でも有数の特殊な才能を持って生まれた冒険者ギルドの英雄である勇者のようだ。

 ガキの頃から、周囲には何をするにも比べられ、挙げ句自分の才能は母親の腹の中ですべて姉に奪われてしまったのだとか。



「いや、それはお前が元からクソ無能だっただけだろ。俺が言うのも何だが、逆恨みを動機に使うと後悔するぞ」

「違う、世界一の占術師に言われたの。元々、姉は剣術の、私が魔術の才能を神から与えられていたんだって。それが、妊娠中の母の事故によって狂ってしまったんだって」

「そういうもんかい」



 占術師だって金を貰って仕事をするワケだから、お前が喜ぶような事を言っただけなんじゃねぇの?

 だなんて、そんな言葉が喉まででかかったが言うのはやめておいた。メロの性格悪そうなこの顔が好きだし、抱く前に喧嘩すると気持ち良かねぇからな。



「そのせいで、私はギルドの受付なんて最底辺の仕事をしてるのよ。産まれるよりも先にすべてを奪われた私の気持ちがあんたにわかる?」

「わからん。でも、それがお前の復讐だっていうんならやってやるよ。居場所は?」



 立ち上がって紹介状だと思っていた紙を受け取りながら言うと、メロは目を丸くして俺を見た。

 なんだこいつ、自分で言っておきながら驚くだなんて。



「じょ、情報はここにまとめてあるわ。丘の上の豪邸に、商人の男と二人で暮らしてる」

「子供は?」

「いないハズよ。どうして?」

「出来れば、ガキは殺したくない」



 早速行動だ。



 俺は、まず恋人の商人の男を見つけ出して殺した。

 少しは時間がかかると思ったが、人が良くて優しい奴だったから簡単な仕事だった。



 オフィスへ向かって適当な嘘をついて面会を申し込み、そして呼び出し二人きりになった後に殺した。

 その後、蘇生魔術が効かなくなる時間まで俺が恋人に変装して別の商人共を騙してアリバイを作り終わり。これくらいの魔術は、10歳のガキでも使える簡単なモノだ。



 まぁ、俺はアイテムに依存しなきゃならんけど。



 おまけに、ちょっとした手違いで他にも見張りと秘書の二人を殺すハメになったが。まぁこいつらも平和ボケした連中で助かったよ。



 俺、痛いの嫌いだし。抵抗されたら、頭にくるから。



「よし、鍵が手に入った。明け方に殺すぞ」

「え、えぇ……」



 仕事を終えて帰ってきたメロに状況報告をすると、彼女は顔を真っ青にして俯いた。

 こいつ、俺を試してたのか?なかなか図太くてしたたかな女みたいだが、人間ってのは実際に事が起きてみるとビビったり吐いた唾を飲み込もうとする生き物だ。



 だから、俺はこうやって依頼人の退路を断ち切る。罪も、報酬も、証拠も、絶対に逃さないために。



「ところで、姉をお前の手でやる覚悟はあるか?」」

「無理ね。不意打ちでもやられるわよ、背後に立っただけで気が付くような化け物だもの」

「質問ちゃんと聞いてたか? 俺は、覚悟があるのかどうかを訊いたんだ」

「あ、当たり前でしょ? 何度もやろうとしたわよ」



 なら、今日中に片が付くな。



「了解した。作戦を伝えるぞ。まず、俺がこの鍵を使って玄関に忍び込むだろ?」

「うん」

「そしたら、数分後にお前が家の戸を叩いて丸腰のターゲットを誘き寄せる。きっと、その頃には恋人の帰りがなくて内心焦っているハズだ。お前相手なら、警戒心も薄れるだろ」



 メロが、唾をゴクリと呑んだ。



「そして、お前らが世間話でもしてる最中にいきなり恋人の首を投げる。ビビって意識を無くした一瞬に俺が後ろから首をハネる。バッサリ。簡単だ」

「……あんた、人間じゃない」

「まぁ、多分一発じゃ死なねぇだろうから何度か刺す必要があるだろ。恨み辛みがあるなら、そんときに発散しとけ」



 そして、俺は時間になるまでビビったメロを優しく慰めながら抱いた。

 この、気の強い女が俺の言いなりになってる瞬間の為に生きてると言っても過言じゃない。マジで勃起が止まらねぇ。



 いや、変態だよ。でも、多かれ少なかれ、男なんてみんなそんなもんさ。



 ……。



「よし、やるぞ」



 家へ忍び込み、メロのアクションを待つ。

 しばらくして、家の戸を叩く音が鳴り響く。俺は、上から降りてくるハズの勇者を待ち構えて息を殺した。



 ……だが、俺は勇者ってモンを少し甘く見過ぎていたらしい。



「動かないで」



 階段裏の天井に張り付いていたのだが、俺の下を通り抜けていった瞬間にミラは振り返らず呟いた。

 寝巻き姿に剣を持っている。こいつ、間違いなく戦う準備が出来ている。



 暗闇の中でもメロとそっくりなのは分かったが、心なしか綺麗で純粋で正義感のある女に見える。彼女の自信と生き様がそうさせているのか?



 俺は、こいつが嫌いだ。



「メロに何を頼まれたの?」



 黙って、何とかこいつを殺す方法を考える。扉の奥で、再びノックした音が鳴る。

 「ミラ?」と呼ぶ声が聞こえるが、どうにも憎しみがこもった声というのは分かりやすいモノだ。



 なるほど。



 もしも俺がミスったのでなければ、こいつはメロの殺気を感じ取って警戒していたのか。

 素人に殺す気があるかなんて確認しなきゃよかった。やっぱ、男ってのは女に惚れちまうと本当にダメだな。



 優しくしたくなるんだよ。どうしても。



「答えて、あなたは一体――」



 瞬間、飛び降りて、しゃがんだ状態から蹴りをカチ上げるもミラには通用しない。

 逆に足を掴まれて、壁に叩きつけられてしまった。やべぇ、これどう考えても女のパワーじゃねぇぞ。



「なら……」



 腰から出した煙玉を地面へ叩きつけ、ボフ!と視界を阻害し扉から逃げようと駆ける。

 しかし、ドアノブに手を掛けるとそこを目掛けて細い剣が伸びてきた。二の腕に仕込んだ鉄板で辛うじて防いだが、衝撃はかなりのモノだ。



 俺は、扉から吹っ飛びながらミラの恋人の頭を手放してしまった。包みが解けて、見せるために残しておいた綺麗な死に顔が顕になる。



「……あ、アラン?」



 本当に、本当に僅かな瞬間だけミラに動揺が生まれた。



 ならば、チャンスはここだけだ。俺は、手首から伸ばした極細のワイヤーを煙で見えない廊下の奥へ投げて壁に突き刺す。

 次に、ワイヤーにたるみを持たせて輪を作って剣を掴むミラの手首へ引っ掛けるように手先を動かした。



「いてぇぞ」



 今度は、吹っ飛んだ扉の破片を持ち手を作るように反対側のワイヤーへ引っ掛ける。

 最後に、それを自分の腕へ巻き付けて飛んでいかないように歯を食いしばり、俺は衝撃のままに丘の下へと転がっていった。



 当然。



 ――ザシュ!



 月を背景に、赤い飛沫が舞う。ミラの手首から先が吹っ飛んだからだ。

 鉄板を仕込んでるとはいえ俺も無傷じゃ済まないが、片手を失ったミラに比べれば何てことはない。



「なん――」



 しかし、彼女は痛みを感じていないらしい。

 それが、勇者の才能なのか恋人を殺されたショックなのか。理由はよくわからんが。俺は、着地したのと同時にナイフを投げつけてミラのデコへ突き刺した。



 いくら無敵でも、これで思考能力は奪えただろう。魔法も封じられたな。



「あんた、自分が弱いって言ってなかった?」

「俺の言葉を信じるなんて、俺のこと全然わかってくれてねぇんだな」



 倒れたミラは、痙攣しながら傍らに転がる恋人の顔を見つめて泣いていた。人間が、目の前で大切な者を奪われたときに見せる悲しい顔だ。



 怒りで震えているのか、強く歯を食いしばっている。

 これも、正しくて強くて、中々死んでくれねぇ奴を殺す時によくある。彼女は間違いなく正義の味方なんだろうし、勝ち誇って口上なんかで時間を掛けてたら覚醒しちまうだろう。



 だから、すぐに殺す。



 俺は、戦士でも兵士でもない。そこらにいるパン屋がパンを焼いて売るように、金のために人を殺す人殺しだから。



「悪い、メロ。トドメ刺しちまった」

「……うん」

「まぁ、こいつは冒険者だし、死体は適当なダンジョンにでも放り投げておこう。冒険者ギルドには、『本来いないハズの強力なモンスターが出現した』とか適当な情報を流しといてくれ。お前なら出来るだろ?」

「……うん」

「死体、蹴っ飛ばすか? 殺してぇほどムカついてたんだろ?」

「……うぅん、いい」



 なんでメロが泣いてるのか、その理由は何となく分かるよ。

 でも、だからといって彼女の心を語ったり、ましてや慰めたりなんて絶対にしない。



 俺って、優しいからさ。



「それじゃ、後始末はしておく。お前の家の裏に金を用意しておいてくれ。受け取ったら、ほとぼりが冷めるまで身を隠すから」

「ま、待ってよ。まさか、私のことを一人にするつもり?」

「二人になった気はねぇぞ」

「いやよ! 勇者のパーティなんてみんな有能なんだから! 魔術を使われたら私なんて全部白状しちゃうわよ!」

「だからなんだよ」



 よくある話、大切な奴ほど遠ざけてしまう的な。そういう感じ。



 いや、俺は全部手元に置いて俺が安心したいと思うし、死んだら死んだで新しいのを見つければいいと思ってるけど。

 でも、これってかなり綺麗事に聞こえるし、適当に誤魔化そうと思ったらそんな理由がいいんじゃないかね。



「いやだ。私を守って」

「けどよ、お前が消えたら自動的に犯人特定に繋がるじゃねぇか」

「なら、この街から出ればいいじゃん。お願い、私の初めてもあげたんだからさぁ」

「性格ゴミすぎて誰も貰ってくれなかっただけだろ」

「……あんた、絶対に殺す」



 そもそも、俺は商売がやりたくて殺しを請け負ったのに。一緒になったら、報酬だって実質タダみたいなモンじゃねぇか。

 でもなぁ、俺ってこいつのこと好きだしなぁ。どうしようかなぁ。



「というか、別にこの街じゃなくてもいいんでしょ? 逃げた先でお店やろうよ。私、趣味もないから貯金多いよ」

「あぁ、そっか。それでいいか」



 なんていう軽いノリで、俺は勇者の死体の後始末を終えた後にメロとウィスクを脱出して『スコット』という街へ向かうことにしたのだった。



 ところで、スコットで出した店は俺の無能っぷりをいかんなく発揮したことで3ヶ月も保たなかったから、俺とメロはまたしても人を殺しながら旅をする流浪人となった。



 おまけに、死体を遺棄したダンジョンから勇者が見つかった事により、半年後にはウィスクでの罪が全て公となる。



 表向きは名手だった暗殺ギルドのマスター殺害、勇者殺しに加えて大企業の社長を暗殺。捕まったら死刑確定、なんならデッド・オア・アライブでの指名手配だ。



 一連の犯行に共通項はなく、また俺であるという証拠も上がってはいないのだが。

 まさか、『俺以外の誰にも出来ない』という理由でバレるとは思いもしなかった。



 暗殺ギルドのヤツがチクったんだと。そんなんありかよってんだよな。



「そんで、なんでお前までついてくんだよ」

「だって、あんたのせいで無一文になっちゃったし。それに、今回の商売であんたがマジの無能ってわかったから、殺し方を覚えようと思ってさ。私にも出来るじゃん」

「クズだな」

「どうせ、私は勇者の絞りカスで出来上がったクソ無能でバカ性格の悪いメンヘラ女ですから。つーか、もしダメって言ったら国にチクってあんたに全部擦り付けてやる」



 言って、メロはべーっと舌を出してから俺にキスをした。



 ……まぁ、女には女にしか出来ない殺し方とかあるんだろう。使い道はきっとある。



「それじゃ、行くか」

「どこいくの?」

「俺よりクズな金持ちがいるところ」



 こうして、俺たちは適当な馬を一頭かっぱらってカジノ街の『ビルー』へと旅立った。



 もしも再び落ち着ける日が来たら、ギルドマスターの代わりに俺が暗殺ギルドでも作ろうかと思っている。

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