第18話 闘技大会・予選

闘技大会当日–––––


結局、フード男達の騒動以降何も特に起こらなかった。

憲兵へ連行したはいいもの、ダン達含むフード男全員が怯えた様子で口を開かず、また憲兵へ根回しが働いたのか、尋問はそこそこに、すぐに刑務所行きが確定した。


「うーん、ノブス公爵家にしては今回の件だけで終わるのも変だし、聞く所によると雇われた奴らの実力もあんまりだそうじゃないか。」


「そうですわね。奴らにしては詰めが甘いというか、完全に敵として認識してすらいないのかもしれないですわね。」


キャサリンとキャサリンの父は共に、ノブス公爵家の企みではないのでは、と思うほど稚拙なものだと言う。


しかし、フード男達の企み以外、特に大きな進展を見せないまま闘技大会の予選当日を迎えた。

予選では、前年度の上位出場者やB級冒険者はシードのような形で本戦へと進むことになっている。


今回でいえば、僕もキャサリンも初出場のため、予選から参加するのだが、驚いたことにロンは元B級冒険者であった。


ちなみに闘技大会の参加者はB級冒険者相当までとなっており、過去の優勝者でB級→A級と冒険者ランクを上げた人は参加できなくなる仕組みだ。


A級冒険者やS級冒険者を除く理由としては、主に戦いにならないから、という理由があるらしい。

ちなみにA級冒険者はノースランドにおいて100人〜200人ほどしかいないと言われており、S級冒険者にいたっては7人しかいない。


冒険者のほとんどがB級止まりなのだ。B級とA級、さらにはS級の各級にはそれぞれ大きな壁が隔たれている–––––


◇◆◇◆◇◆◇◆


闘技大会で、僕は仮面を付けながら戦うとのことだったので、露店で買った仮面を付けた。


予選開始の銅鑼が鳴ると共に、シード権を持つ者達以外は、トーナメント戦で戦いを始めた。


ギルド主催の大会となっているため、トーナメントはいくらか融通が利き、僕とキャサリン、そして何人かギルド側で手配してくれた冒険者たちは被ることなく戦うことができた。


「キャサリン嬢、貴女との結婚のために本気を出させてもらいますよ!」

「ふんっ、私に勝てないようでは、結婚など夢のまた夢ですわ!!」


キャサリンの対戦相手は、うん、なんというか個性的なキャラを持っている人だったが、キャサリンの土魔法で一瞬にして打ち砕かれていた。

あんなに意気込んでたにも関わらず、可哀想なことに、帰る頃には実力の差を感じて魂が抜けてるようだった。


ギルドが手配してくれた冒険者たちは割と腕が立つようで、ほとんどの者が本戦へ行けるようだ。

ただ、一つ気掛かりなのが、執事のような格好をしたフィンという青年が他と一線を画す戦いをしていたことである。

彼はきっと予選トーナメントの中においてはトップレベルの方だと思う。


そして、僕はというと、強化魔法以外の無属性魔法をほとんど使わないまま本戦へと進むことになった。


そして、仮面を被った参加者は他にも居たせいか特に目立つこともなかった。

ちなみに、目出し帽を被りパツパツの全身タイツのような姿をした参加者を何人も見かけたが、変態なんだと思ったのは間違いじゃないよね、、?


幸いにも僕達の思った通りにトーナメントは進んだ。フィンという青年の活躍を除いて。


ウェールはシード権により本戦からとなっているが、余裕そうな顔で机に足を掛けながら予選トーナメントを眺めていた。


「予選程度じゃ動いてこない感じかな?」

「そのようだね、彼らにとっては特に脅威でもなんでもないと思っているといった所だね。」


僕とアルはまだ本番ではないことを悟っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

属性無しの魔法師〜無能魔法使いと侮ることなかれ〜 ヴァッハCNS @vach

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ