第17話 闘技大会2日前ー影の者ー

 フードを取った男の、いや、男達の顔には見覚えというか面影がある。


「そこにいるのは誰だ!!」


 男達は怒気を交えて叫ぶ。

 僕は一旦その場を離れようとした。


 しかし、目の前にはそれぞれのフード男達のリーダーが立ちはだかった。


「顔を見せろ!お前は何者だ?」


 リーダーの1人がそう言いながら、火属性魔法を放ってきた。

 炎に照らされ、僕の顔は顕になった。


「お前!!死んだはずじゃ、、、!!」


 フード男達のもう1人のリーダーの正体はダンだった。


「おかげ様で生きてたよ。君に裏切られるとは思ってもなかったけど。」

「はっ、お前みたいな無能と一緒にいてやっただけでもありがたく思って欲しいぜ。」


 ダンのようにこれ程までふてぶてしいと、逆に清々しさすら感じられる。


「たしかに僕は無能だったかもしれない。でも、僕は絶対に仲間を見捨てたりしない!」

「久しぶりの再会なのにムカつく奴だな。八つ当たりも込めて口封じしてやるよ!ジョン、力貸せ。」

「あいよ!」


 ダンの言葉に反応したジョンは、水属性魔法を放ってきた。

 そして、それに合わせてダンが雷属性魔法を打とうとしている。


「うわぁぁぁぁぁ!」


 咄嗟に強化魔法により魔力を胴体あたりに障壁のように使用した。

 障壁ごと壁際まで押されたかのように振る舞ったが、実際はノーダメージである。

 ダン達に気づかれないよう、壁にぶつかる直前で離脱した。もちろん、魔法は空を切り壁を破壊したが、そこにもう僕はいない。


「あっはっはっは、やっぱり無能のまんまだったな!!」


 ダンが勝ち誇った顔で言うが、壊れた壁を見て違和感を感じる。


「おかげ様で、強くなることができたよ。それじゃあ、反撃させてもらうね。」


 ダンの真後ろから声を掛けながら、魔力を纏った足で背中を蹴飛ばす。


「ウォータース、、、」


 ジョンが咄嗟に魔法を放とうとするが、魔法を放つ前に魔力の拳が炸裂した。

 他のフード男達も応戦しようとしていたが、まず僕を捉えきれていない。


「な、なんなんだよ、こいつ!ヴェール様に報告するぞ!」

「そうはさせないよ。」


 ヴェールに報告するために逃げようとしていたフード男を含め全員を気絶させ、縄で縛った。

 夜遅いということもあり、仕方なく憲兵の関所へ連れて行き、突き出すことにした。


「この男達は?」

「何か怪しいことを企んでいたのを耳にして、尾行していたら襲われたので返り討ちにしました。」


 深夜にさしかかる所だったが、憲兵へ事の経緯を話した。


「もうすぐ大事な武闘大会だというのに、こんな物騒な奴らがいるとは、、明日の朝には尋問専門の奴らに引き渡すよ。」


 そして、憲兵はダン達を関所の簡易的な牢屋へ入れた。


「重かったぁぁ。」


 強化魔法を使っていたとはいえ、6人もの成人男性を運ぶのは意外と重労働だった。

 僕は気絶させたのが間違いだったと思うほど、人間は意識が無い状態だと通常より重くなるのだと初めて知った。


 そして、ダン達フード男を憲兵のいる関所まで運んだはいいが、彼らが怪しげな腕輪を何個か所持していたので、一個だけ拝借しておいた。


「これを何に使おうとしていたんだろう。」

「見たことない腕輪だけど、禍々しさを感じるね。」


 僕達は禍々しい腕輪を持って、ヴェールの企みを一つ潰したことをキャサリンに報告しに行ったのだった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「報告ありがとうですわ。まさか裏でこのような腕輪を使って何か企んでいるとはびっくりですわね。」

「彼らノブス家は卑劣でありながら、実力も持ち合わせている実に厄介な家系なのだよ。」


 キャサリンの父が言うように、彼らは決して実力がないわけではなく、むしろ他よりも才能に溢れている。

 しかし、万全を期すためなのか、それとも単に権力の誇示のためなのか、どちらにせよ厄介極まりない存在となっている。


 今日が過ぎれば、闘技大会まで残す所あと一日となる。

 気を引き締めて、僕とアルは再度修行しながら警戒へとあたった。

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