第55話 動き出す5/7

 ツンデレのテンプレートみたいなアカ姉さんを眺めていたら、視界の端に翔ちゃんの笑みが映った。

 正確には、目が笑っていない。

 げっ、怖いよ。あんな顔初めて見たー! 慌ててアカ姉さんから視線をそらす。

 前々から思ってたことですが、なんか2人の距離感ぐんぐん縮まってない!?

 だって今の目って間違いなく、嫉妬ですよね。咲羅が、よく私と談笑している相手に同じような瞳を向けてるからわかるのよ。

 あーモヤモヤしてきた。後で翔ちゃんに聞いてみようかな。いや、彼女たちから話してくれるのを待つべきなのかな。言わないってことは、隠しておきたいってことなのかもしれないし。

 うん、静観しよう。そうしよう。

 

 1人頷いていたら、

「樹里ちゃんは何色がいい?」

「ふぇっ?」

 しまった。思考が彼方へぶっ飛んでいたせいで、話を全く聞いてなかった。

「メンカラの話です」

 ありがとう駿ちゃん。成程ね。だから色か。てか、いつの間にアクロからメンバーカラーの話になったの。

 私よ、もっと集中しようね。

「ちゃんと話聞いとけよお、にゃははっ」

 駿ちゃんは笑ながらホワイトボードを指差した。

 そこに書かれていたのは、メンカラの案。なになに、アカ姉さんが赤、翔ちゃんが青、琴美さんが紫。咲羅はピンク。

 うんうん、全員納得。イメージ通り、って

「私以外全員決まってる!?」

「うん、話しはちゃんと聞いとこうねえ。にゃは」

 本当にすみません。こればっかりは謝るしかない。


「で、樹里は何色がいいの」

 隣の咲羅が、謎に私の頬をツンツンしながら聞いてきた。

「うーん」

 何色がいいんだろ。特に好きな色はないしな。いて言うならピンクだけど、それは咲羅に似合う色だから好きなわけで。「私がピンク!」なんて言うつもりは毛頭ない。

 頭を悩ませていると、視界の端にアカ姉さんたちが顔を見合わせている姿が映った。

 およよ、どうしたの?

「私たち的に樹里ちゃんに似合う色を、一斉に言ってみる?」

「そうね」

 琴美さんの提案に、アカ姉さんも翔ちゃんも、咲羅も頷いた。

 おー、いいですね。お願いします。


「よしっ、じゃあ……せーのっ」

「「「「黄色」」」」

 まさかの全員一致! 嘘でしょ。解釈一致してるんですね。

「なんで?」

 首を傾げる私に、

「だって私たちを照らしてくれる光だから」

 咲羅の言葉に3人が頷いて、

「太陽みたいに明るいからオレンジでもいいんだけど――」

「やっぱり『光』ですよね」

 翔ちゃんの顔を見て、アカ姉さんは優しく微笑んだ。

 およよよ、あの人のあんな表情初めて見ましたよ。ツッコミたいところですが、なんか2人だけの世界って感じで口を挟めない。部外者立ち入り禁止です。


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