第50話 本当は *駿太*(BL)
「今日はあんがとねえ」
全員を送り届けて、2人きりになった車内。やっぱり運転する三春はかっこいいわあ。
何回見ても惚れちゃう。だってイケメンなんだもん。しょうがないっしょ。
「別に」
ぶっきらぼうに答えたけど、三春さんや、口角が上がってますよ。嬉しさ隠しきれてませんよ。
もー俺の三春ってば可愛すぎる!
「可愛いねえ」
あっ、しまった。
「可愛くねえし」
そうなんだよなあ。可愛い、って言ったら拗ねちゃうのよ。本当のことなのにね。
本人は「かっこいい」って言ってほしいらしい。
いやいやいや、筋肉マッチョマンなのに甘い物が大好きで、すぐ拗ねちゃうとことか、可愛いでしかないじゃん!
でも、
「ごめんごめん、三春はかっこいいよ」
「ふふっ」
今日はいろいろと迷惑かけちゃったしね。ちゃんと言葉にしてあげますよ。
「今、『迷惑かけた』って考えたろ」
「およよ」
なんでわかったの?
そう首を傾ければ、
「あざとい……ってそれはおいといて、お前の考えてることなんてわかるっての」
「にゃはっ、さっすがー」
俺の考えてることはお見通しなんね。
いっつもそう。三春は、言葉にしなくても俺の気持ちをわかってくれる。だからといって、言葉にして伝えなくていいわけじゃない。
一回別れたからね。もう二度と別れないで済むように、気持ちは声に出していかないと。
「てかさ、本当は咲羅がどこにいるか知ってんだろ」
運転中だけどチラリと俺を見て言った。
「およよよよよ」
キョドる俺に、
「当たりだな」
目を細めて笑った。
「あちゃー、三春には隠し事できないねえ」
「当たり前だろ。というか、隠し事なんてすんな。すぐバレんだから」
「んにゅー」
そうなんだよな。俺って結構演技派なのよ。なのに、三春にだけは嘘とか隠し事とか、すぐバレちゃう。
俺のことをよく見てくれてるってことだから、嬉しいんだけどね。
「言いたくないならいいけど」
口ではそう言いながらも、拗ねてるのまるわかりよ。顔に出てるっての。
「にゃはっ、三春になら言ってもいっか」
多分だけど、と前置きしたうえで
「姉ちゃんがもってた別荘にいると思うんよ。あの子鍵持ってるし」
「成程なあ。因みに、その場所のこと曽田さんは」
「知らない」
聞かれても絶対教えない。あの場所は母ちゃんや父ちゃん、姉ちゃん、咲羅との思い出の場所だから。
曽田さんが入ってしまったら、なんというか、
「それはわかる気がする」
「およよ、声に出てた?」
「出てた」
微笑む彼。
あちゃちゃ、出ちゃってたか。これから演技派って言うのやめようかな。
「それ、樹里ちゃんには教えないの」
「……迷ってる」
咲羅があそこに逃げた確証はないし。
それに、
「咲羅にも考える時間が必要なんだと思うんだよね。今まで走り続けてきたわけだし。ちょっと時間をあげたいんよ」
去年ちょっと休んだとはいえ、今までほぼ休みなしでアイドル界を
「樹里ちゃんには申し訳ないけど、ちょうどいいタイミングだったんじゃないの。アイドル界のテッペン獲って、名実ともに女王様になって。夢を叶えた今だからこそ、自分を見つめ直す時間がいるんじゃねえの」
「にゃっす」
三春の言う通り、国民的アイドルになった今だからこそ、ゆっくり休んでこれからのことを考える時間が咲羅には必要だと、俺は思うのよ。
樹里ちゃんには全部バレていたわけだけど、隠してきた自分の弱さや醜さと向き合わなきゃいけない。
きっと辛いし、しんどい。
「こればっかりは、咲羅が自分でどうにかしなきゃいけないことだから。俺が口出しできることじゃない」
「そうだな」
幸いなことに、事務所は勝手に無期限活動休止を発表したわけだから、考える時間はたっぷりある。
「俺の勝手な願望だけど、このまま2人が別れるのは嫌だな」
「うん。俺っちもそう思う」
自分と向き合った結果、樹里ちゃんが黒いところも弱さもひっくるめて愛してくれてるんだって気づいてくれたらいいなあ。
流れていく夜景を眺めながら、祈る。
どうか、2人にとって幸せな未来が待っていますように。
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