第48話 仲間2/4
「言いました。本当にすみません。本当に、本当にすみません」
「樹里ちゃん」
頭を下げて謝り続ける私に、
「なにがあったのか、教えてもらえるかな」
隣に座った琴美さんが淡々と言った。
「えっと……」
どこから、一体なにから話せばいいんだろう。
「話しやすいとこからでいいから。言いたくないことは言わなくてもいいから、ね?」
私の考えを言葉にしてくれて、背中を押してくれた琴美さん。
「強がんなくていいんだよ」
いつも父親、もしくはお兄ちゃんみたいに支えてくれる駿ちゃん。
「私もアカ姉さんも、お2人の関係のこと、なんとなくだけどわかってるつもりです」
再びステージに立つ決心をしてくれた翔ちゃん。
「私たちはもう仲間でしょ。こういうときこそ支え合わなきゃ、でしょ」
批判を受けることを承知の上で、アイドルに戻りたいと言ってくれたアカ姉さん。
みんなの言葉が、じんわりと胸にしみわたっていく。
「吐き出しちゃいな」
ふんわりと柔らかい笑みを浮かべた駿ちゃんの言葉が引き金となって、私は昨日のことを全て、流れ出す涙と共に伝えた。
「そっか……話してくれてありがとうね」
嗚咽混じりで話の順序はバラバラでわかりにくかっただろうに、話し終えた私の背を琴美さんがそっと撫でてくれる。
誰も口を開かない。私のすすり泣く音だけが響くリビング。
本当にごめんなさい。私のせいで、みんなが事務所を辞めることになってしまう。
後悔したってもう手遅れだってわかっているけれど、考えてしまう。
私が「新しいグループをつくりたい」なんて夢物語を言わなければ、こんなことにはならなかった。
「まっ、仕方ない!」
しんみりとした空気は、パチンっと手を叩いて明るく言ったアカ姉さんによって破られた。
「樹里ちゃんはよく頑張ったよ」
「うん。我が儘女王様にちゃんと想いを伝えられたんだもん。咲羅は頑固だからね、一回思考がマイナスに向いちゃったら、方向性変えられないんだから」
そう言いながら撫で続けてくれる琴美さんに向かって、
「でもっ、私のせいでみんな――」
「でもじゃない」
珍しく強い口調で言葉を遮られた。
「私たちはさ、樹里ちゃんが声をかけてくれた日から覚悟決めてんの。どんなことがあっても、このメンバーでやっていくって」
「そうですよ。私に新しい道を示してくれて感謝してるんです」
「翔ちゃん……」
大手の事務所を辞めることがどういうことか。みんなわかっているはずなのに、誰も私を責めない。
どうして、全部私が悪いのに。
「私のせいで、琴美さんはRoseを辞めることになっちゃうんですよ。多分、咲羅のときみたいに華々しく卒業させてもらえないですよ。それでもいいんですか」
聞かずにはいられない。
彼女がまだRoseのリーダーとして活動していきたいことはわかっていたから。
「そうだねえ。未練がないって言ったら嘘になるし、卒業じゃなく脱退っていう形になるんだろうなってこともわかってるよ」
困ったように眉をハの字にしながらも、
「それでもいいの。私は樹里ちゃんたちと新しい道を歩んで行きたいから」
琴美さんの瞳の奥には、力強い決意が見えた。
「どうせ、こうなったときのために手は打ってあるんでしょ?」
アカ姉さんが駿ちゃんの方へカラダを向けて言った。
「んにゅ? もち。昔俺っちとアイドルやってた
立ち上がりながら言った彼の言葉に、アカ姉さんは満足そうに頷いた。
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