第47話 最愛の人2/4
私の話をちゃんと聞いてくれないのなら、言うしかないよね。いつかはちゃんと話し合わなきゃいけなかったことだし。
「さくちゃん、全部知ってるよ。監視カメラのことも、盗聴器のことも」
この前駿ちゃんに教えてもらってから、彼女にもらったプレゼントの中身をチェックした。
ぬいぐるにストラップ。綿の中に上手く隠されていた盗聴器。目玉に擬態したカメラ。
あぁ、全部見られてたんだな。
ショックというか、驚いたのは驚いたよ。でもそれ以上に、こんな犯罪まがいのことをしてまで私の全てを知りたいと思ってくれてるんだって、狂おしいっほどの愛しさがカラダ中を駆け巡ったの。
まがい、って間違いなく犯罪ですが。付き合てるからって許されることじゃない。
そんなことわかってるけど、
「嬉しかったよ」
「は?」
やっと顔を上げてくれた。彼女はポカーンと口を開けている。おまぬけなその表情に吹き出しそうになる。
怒られると思ったのかな。普通そうだよね。
「四六時中監視したいぐらい、私のことを愛してくれてるってことでしょ」
口下手で泣き虫な私をこんなにも大切にしてくれる人、他にはいない。
「でも、同時に不安だったんだよね」
元フィオ3期生の
「怖かったんだよね。私の心変わりが」
アイドルとして成長していくごとに、焦っちゃったんだよね。
「大丈夫だよ、さくちゃん。私はなにがあっても絶対離れないから」
この関係にゴールがないことなんてわかってる。他の人にとって異常だと思われることも、「百合営業」とファンから
それでも、
「さくちゃんが指輪やブレスレットで私を縛ったように、私は貴女を、貴女の傍でアイドルを続けることで縛りつけているつもりだよ」
お互い様なんだよ。だから、怒ったりなんてしない。
「絶対、なんてないんだよ」
いつも私を真っすぐ見つめてくれる大きな瞳は、私の胸元辺りに向けられている。
「どうしてそんなこと言うの」
私の想いを受けとめてくれないの。
「気持ち悪いじゃん。ずっと監視してるなんて」
堂々とした姿でステージに立っている女王様は、ここにはいない。
目の前にいるのは、私に嫌われることを恐れている、か弱い少女。
「そんなこと――」
「そんなことあるんだよ。私が今までやってきたことは最低最悪なの。知ってるでしょ?」
知らないと、白を切ることはできるのに、私は頷いてしまった。
貴女には正直に向き合いたいから。
「Roseのフォーメーションに口を出して、気に入らない子は曽田さんに後列に下げてもらって、華開こうとする彼女たちを潰してきた」
「さくちゃん……」
今にも泣きそうな顔をして、唇を震わせている17歳の少女。
「アカ姉や翔のこともそう。傷ついて苦しんでいたのに、わざと見ないふりをした。自殺未遂を図ったときだって、全然心配なんてしなかった。むしろ、私より世間から注目された翔が許せなくて、曽田さんにお願いして通り魔事件を起こしてもらった」
そんなの知ってるよ。わかってたよ。何年貴女の傍にいると思ってんの。
心の中で思うだけじゃなくてちゃんと言葉にしなきゃ伝わらないのに、胸に詰まって一言も出てきてくれない。
抱えてきた闇を吐露する咲羅の表情が苦しそうで、私の胸の苦しさが増した。
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