第47話 最愛の人1/4
曽田さんと対峙した直後、【話したいことがある】と咲羅にメッセージを送った。
わざわざそんなことを送らなくてっも咲羅は私の部屋に来るんだろうけど、一応ね。
「ただいまあ!」
「おかえり」
今日も元気よく帰宅した彼女を玄関で出迎える。
「今日も疲れたけど、樹里の顔見たらそんなの吹っ飛んだわ」
「んんんん゛」
嬉しいこと言ってくれるじゃん。
「にゃはは」
首傾けないでもらっていいですか。あざといです。逮捕したいです。
「それで、話したいことってなに?」
靴を脱ぎながら尋ねてきた咲羅。
明るくて美しい笑顔を向けてくれるとこ悪いけど、今から話すことは、きっと貴女にとって嬉しい話題じゃない。
だって、私にしか興味ないもんね。アカ姉さんたちのことなんて、どうでもいいもんね。
自意識過剰って言われてもいい。事実だもん。
「取り敢えずご飯食べてからにしよっか」
いつまでも向日葵みたいに素敵な笑顔絵を見ていたい。でも、私はみんなと約束したから。絶対説得するって。
たとえ貴女の笑顔を消すことになったとしても。
「ごちそうさまでしたあ」
ちゃんと手を合わせて言うあたり、育ちの良さが出てる。こういうところ、好きなんだよなあ。
「うん、ごちそうさまでした」
私たちは一緒に食器を流しに運んだ。
「あ、洗い物は後でするからさ。もっかい座ってくれるかな」
「んにゅ? にゃっす」
ニコニコしながらリビングの椅子に戻った咲羅の向かい側に座って、緊張で震える手を机の下に隠しながら口を開く。
「話、なんだけど」
「うん」
どうか説得できますように。受け入れてくれますように。
「私ね、アカ姉さんや翔ちゃん、琴美さんと新しいグループを結成しようって話をしていて――」
「待って。なにそれ、どういうこと」
一瞬で笑顔が消えてしまった。眉間に皺を寄せて、
「勝手に話進めてたの。なんで? Sorelleはもういらないってこと。私とアイドルするのは飽きたってこと」
「違う。そうじゃないの」
的外れすぎる。飽きるわけないじゃんか。私はさくちゃんがいないと存在意味を見出せないくらい、貴女にぞっこんなんだから。
「へえ、だからアカ姉んとこ行ってたんだ。そっか、私はもう用済みってわけね」
「さくちゃん!」
聞く耳をもたず喋り続ける彼女を止めるために、つい大きな声を出してしまった。
咲羅はビクッと肩を震わせて、俯いてしまった。
あぁ、貴女にそんな表情をさせたかったわけじゃないのに。
心に小さな棘が刺さったように苦しいけれど、ここで話をやめるわけにはいかない。
「そのグループにね、さくちゃんも入ってほしいの」
ちゃんと私の想いを伝えなきゃ。
「さくちゃんがいてくれればいい。その気持ちは変わらないよ。これからもずっと傍にいてほしいし、Sorelleがいらなくなったわけじゃない。飽きたわけじゃない。でもね、みんなと一緒に歌いたいの。もう誰も見捨てない、賞味期限なんてないグループをつくりたいの」
さくちゃんといつまでもアイドルを続けるために。
重ねた言葉は彼女に届いたはずなのに、黙ったまま口を開かない。俯いてるから表情も読み取れない。
ねぇ、さくちゃん。さっき自分が口走ったことわかってる?
私がアカ姉さんのところに話に行ったこと、貴女には喋ってないんだよ。
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