第46話 誰も見捨てない4/5

「……君の気持ちはよくわかった。それでも、僕は新しいグループをつくるつもりは、ない」

 ハッキリ言われてしまった。

 残酷な言葉を言った張本人は、再び笑みを浮かべている。ふざけんな。お前なんかに私たちの想いがわかってたまるか。

 1ミリも理解してないくせに、理解したふりすんな。

 そっちがそんな態度とるんなら、もうなりふり構ってられない。


「駿ちゃん」

 彼の方を振り向いて、頷く。

「あいよ」

 そう言って彼がバッグから取り出したのは、ボイスレコーダーと沢山の写真。

「曽田さん、これがなんの写真か、貴方ならすぐにわかりますよね」

「ほう」

 小さく呟いて、曽田さんは写真をめくっていく。

「全く、こんな写真いつ撮ったんだい」

 今まで表情を崩さなかった彼の瞳の奥に見えた、焦り。それを見逃すほど私は馬鹿じゃない。

 ボイスレコーダーいじってゴシップ記者大森との会話を再生する。

「……」

 じっと写真を見つめたまま、静かに聞く曽田さん。全く動かない。


「君たちは、僕を脅すつもりかい」

 つもり? 馬鹿言うな。

「つもり、じゃありません。脅してます」

 四月一日さんが必死に集めてくれたネタ。

「これが世に出たらどうなるか……わかりますよね」

 今まで口を挟まなかった駿ちゃんが、ついに口を開いた。

「君も力を貸しているのか」

「はい」

 黙っていれば、ただ付き添っているだけって言い訳もできるのに、駿ちゃんはそうしなかった。

 ありがとう駿ちゃん。クビ覚悟でここにいてくれることを、無駄にはさせないよ。

「私一人の力じゃ曽田さんを説得できないことなんて、最初からわかってました。だからみんなを巻き込みました。全ての責任は私にあります」

「樹里ちゃん……」

 後ろからアカ姉さんが呟く声が聞こえた。

「受け入れてもらえないなら、私はこの事務所を辞めます」

 踏み台だから切り捨てられるかもしれない。曽田さんにとって大切なのはただ一人。咲羅だから。

 でも、この情報が世に出てしまえば、その大切な一人すら失うことになる。彼はきっとこの業界を去らざるをえなくなる。

「私も辞めますから」

 力強く言われた言葉に思わず振り返る。

「琴美さんっ」

「私も共犯だから」

 優しく微笑んでいるけれど、その瞳は言葉と同じように力強かった。

「「私たちも辞めます」」

 綺麗にハモったのは、アカ姉さんたち。貴女たちまで……。

「僕も辞めますから」

 駿ちゃんも。

 そうだ。覚悟を決めたのは私だけじゃない。ここにいる全員が、曽田さんと闘う覚悟をもっているんだ。

 胸が熱くなって、全身の血が騒ぎだす。

 さあ、どうする曽田さん。私たちは意見を曲げないよ。負けないよ。

 誰も貴方のオモチャじゃないし、踏み台でもない。

 私たちは、アイドルだ。


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