第45話 バレンタイン4
恐るおそる箱を開けると、そこにはハートのエレメントがついた水色のブレスレット。
「うわあ……」
絶句です。あなたがお金持ちなのは前回で学習済みですが、このブランドで再びくるとは。というかまさか
「お揃いだったり……する?」
「もち」
そう言って服の袖をめくった彼女の右手首に光る同じブレスレット。
はいーお揃いでした。この子の財力どうなってんの。並のアイドルじゃ、こんなバンバン高級品買えないっしょ。
いや、彼女をそこらのアイドルと比べるなんて失礼か。女王様ですもんねえ。私もそこそこ貰ってるし。とはいえ、ですよ。
もしや曽田さん、この子にだけ給料倍払ってるのでは? 一回給料明細見せてもらうことって可能ですかね。
「これ、いくらしたの」
「ひ・み・つ」
首をコテンと傾けて、出ましたあざといポーズ。誰か彼女を逮捕してください。
調べたらすぐに値段なんてわかることなんだけど、なんか怖いから調べないでおこう。
「ねぇ樹里、つけてもいい?」
「およ、勿論」
右手首を差し出せば、丁寧な手つきでブレスレットを箱から取って、
「はいっ」
うっとりとした表情でつけてくれました。あちゃー、今の表情最高。ライブで魅せる表情じゃん。写真撮れば良かった。
「んふふ」
ちょっと変態ちっくな声漏れてますよ、女王様。私の前だとキャラがブレッブレなんですよ。
嬉しいけど。可愛いけど。愛おしいけど。
だってアイドル界のQueenが、ファンには見せない表情を私にだけ見せてくれるんだよ。こんなに嬉しいことってないよ。
「さくちゃん、ありがとうね」
「んふふ、こちらこそ」
そのまま右手を握られて、
「これでカラダも私のものだね」
小さく呟かれた言葉を私は聞き逃さなかった。
だから、ちゃんと言ってあげる。ブレスレットを恋人に送る意味をわかったうえで、言ってあげる。
「とっくの昔から、心もカラダもさくちゃんだけのものだよ」
一瞬目を丸くしたと思ったら、すぐに口角上げちゃって。
「知ってる」
そうでございますか。なんて余計な言葉は言わない。
代わりに心の中で願う。
どうか、この関係が永遠に続きますように。死が二人を分かつまで、一緒にいられますように。
ファンから「百合営業」と言われても、認められなくても、私たちは私たちのままでいられますように。
指輪とブレスレットにそっと誓った。
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