第46話 誰も見捨てない1/5

2月19日(土)

 なんと、先日発売した1stアルバムがミリオンを達成しちゃいました!

 朝イチで報せを聞いたときは咲羅と手を取り合って喜び合った。デビューシングル、2ndシングル、3rdシングルに続いてのミリオン。すっごく嬉しい。ファンのみんなありがとうね。

 これからもみんなに幸せを届け続けるよ。


 そんなおめでたいこの日、私は滅茶苦茶緊張していた。

 いよいよ、曽田さんにグループの話をする。

 あの人には、駿ちゃんから話をしてもらった。詳しいことはなにも話してないよ。ただ、「お話ししたいことがあります」って伝えてもらっただけ。

 なんの話か不思議に思ってるだろうけど、考えもしないでしょうね。まさか私や駿ちゃんが反旗をひるがえすなんて。

 いや、あの人なら想定済みかもしれない。私たちの行動なんて。

 それでも立ち向かわなきゃ。

 私や琴美さん、翔ちゃん、アカ姉さんの願いを叶えるために。


「お待たせ」

 翔ちゃんとアカ姉さんは揃ってやってきた。

「全然待ってないですよ」

 言葉通り。私もさっき来たばっかりだから。

「あっ、みんな揃ってるじゃん。私がビリじゃん」

 革ジャンにジーパンというラフな格好で現れたのは、琴美さん。

 アカ姉さんたちが一緒に来るって話をしたら、「それなら私も行く」と言って来てくれた。

 心強い。

「咲羅は?」

 大抵は2人で行動してるからね、琴美さんがそう聞いてくるのは当然。

「今日はソロで雑誌のインタビューです」

「OK」

 未だに彼女になんて話をすればいいのか悩んでいるし、彼女のことを後回しにしたことに罪悪感を覚えてる。「裏切られた」って思われるかもしれない。

 怒られるかもしれない。勝手に話を進めたことについて。

 でもね、さくちゃんを軽んじてるわけじゃないんだよ。ただ、貴女を説得するには外堀を埋めた方が得策だと思っただけ。

「それじゃあ行こうか」

 駿ちゃんの言葉に頷いて、私たちは闘いの場所へと向かった。


「失礼します」

 ノックをして会議室に足を踏み入れれば、曽田さんは既にいた。

「おや、今日は樹里ちゃんに呼び出されたんだけどな」

 約束の10分前だというのに。お早いことで。

「お待たせしてすみません」

 彼の言葉をスルーしつつ、軽く頭を下げる。このメンツな理由は後からわかることだから、今言わなくてもいいでしょ。

「いや、僕が早く来ただけだから。さあ、座って」

 私が真ん中に座る形で、アカ姉さんたちは半歩下がった位置に椅子をずらして座った。

 いつもなら曽田さんの隣に座る駿ちゃんも、今日はこちら側。

「ごちゃごちゃ前置きを話すのは好きじゃないからね、早速話を聞かせてもらおうか」

 いきなりですか。別にいいですけど。

 深呼吸をして、口を開く。

「単刀直入に言います。私と、琴美さん、アカ姉さん、翔ちゃん、そして咲羅で、新しいアイドルグループをつくらせてください」


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