第44話 Answer1/5

2月14日(月)

「……ふわあ、よく寝た」

 ライブの翌日。昼まで爆睡かましていた私は、隣で寝ていたはずの咲羅の温もりが消えていることで

「あっ、今日平日じゃん」

 普通に学校があることを忘れておりました。やらかしたわ。

 今から学校行っても仕方ないし、連絡したところでお昼過ぎてるし。

 しょうがない。無断欠席させてもらおう。

 どれだけ練習で疲れていても、今までちゃんと毎日学校に行ってたんだから、たまにはいいでしょ。

 と言い訳をしつつ、

「咲羅も起こしてくれたらいいのに」

 そう思いながらリビングへと向かった。

 まぁ、多分起こしてはくれたんだろうけど、私は全く起きる気配なかったんだろうな。

 ごめんね、さくちゃん。

「ん?」

 ローテーブルに小さな紙。およよ?

「なになに、『学校行ってきます。樹里のことは上手く言っておくから気にしないで』か……」

 マジでサンキューさくちゃん。

 でも、その優しさが嬉しいような、寂しいような……。


 取り敢えず彼女にメッセージを送ろうとしたところで、ある人物からメッセージが届いていることに気がついた。

「あれ、翔ちゃんじゃん。【今日会えますか】……は!?」

 待って、3時間も前に来てる。ポヤポヤしていた頭が一気に覚醒する。

 なんてこった。疲れていたとはいえ、呑気に寝ていたさっきまでの自分を恨むわ。

 慌てて、【会える!】と送れば、すぐに【××駅前のファミレスで待ってます】って返ってきた。

 待って待って待って。秒で返事きたんだけど。てか、「待ってます」。時間指定なし。もしや、もうファミレスにいる!? マジかっ。

 急いで着替えて、荷物は……えーい、サイフとスマホがあれば大丈夫でしょ!

 昨日ソファーに放り投げたままだったコートを引っ掴んで、家を飛び出した。


 寮からファミレスまで、徒歩で数十分。普段は歩くけれど、今日はタクシーを使った。お金が勿体ないなんて言ってられない。

 翔ちゃんを待たせてるんだから。

 お店に入り、店内を見回すと

「ここです!」

 周囲に気を遣ってか、少し控えめに――それでも結構おっきな声で周囲の注目をあびちゃったけど、声の主は気にせず手を振ってる。

「翔ちゃ……えっ」

 翔ちゃんの隣で苦笑していたのは、アカ姉さんだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る