第43話 終演後

「ちょい、さくちゃんっ」

「なになにい」

 タオルで汗を拭いながら首を傾げる彼女に、

「急にチューなんてするから、ビックリしたじゃん!」

「それはこっちのセリフぅ。にゃはっ」

 そうですね。私もやり返してしまったので、文句言えない。

 はあ……。

 いろんな意味で疲れました。精神的にも、肉体的にも。

 でも、楽しかったからいっか。と汗を拭っていたら……ちゅっ。

「ちょおおおおおい!」

 再び頬に柔らかい感触。一瞬にして、全身にピリピリとした痺れが駆け巡る。

「にゃははは。いぇーい」

 笑いながら咲羅は、スタッフさんにぶつからないように走り去ってしまう。

 あんた、自分が鈍足だってこと忘れてるな?

「待ちなさーい!」


 彼女を追っかけながら、ライブを振り返る。

 本当にあっという間だったなあ。

 アンコール直前はどうなることかと自分でも思ったけど、無事に終わって良かった。

 ほぼミスはしなかったし、歌もダンスも完璧だったと思う。

 咲羅も、流石アイドル界の女王様。オールパーフェクトでした。美しさの中の儚げな表情とか、甘い歌声とか、向日葵みたいに明るい笑顔とか、ぜーんぶ最高でした。

 家に帰ったら沢山褒めてあげよう。多分、彼女も私を沢山褒めてくれるんだろうし。

 褒め合い合戦が起こりますね。絶対。

 そして、私のこれからの課題は体力面ですね。はい、体力づくり頑張ります……。


 ライブ後にもかかわらず元気に走り回る私たちを見て、スタッフさんが「尊い」と拝んでいたことを、後から駿ちゃんに聞いたのでした。

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