第38話 脅す材料2/6

「話元に戻すぞ」

「うん」

 脱線しかけてたな。早く軌道修正してくれ。

「これで曽田とホスクラのオーナーとの繋がりは掴めたわけだけど――」

「え、待って。写真だけじゃ、『ただの友だち』って反論されるだけじゃない?」

 何枚も2人が写った写真はあるけれど、これじゃあ弱い。脅迫には向かない。

「大丈夫」

 口角を上げながら四月一日さんが取り出したのは、ボイスレコーダー。

「まさか」

「そのまさか。バッチリ会話録音できてっから」

 わーお。マジですかい。

 彼がポチッと再生ボタンを押した。聞こえてきたのは薄っすら流れるBGMと、2人の会話。


「その後、井上茜はどうなんです?」

「どうもこうもないよ。研究生として大人しくしてるよ」

「これからどうしていくんですか」

「君がどうして茜の心配をするんだい? あぁ、そういえば、推しだったね」

「はい」

「うーん、そうだなあ。このまま辞めるまで研究生かな。正直、あの子がどうなろうと私は興味ないしね」


 おい、こいつ最低じゃねえか。推しであるアカ姉さんをおとしめるのに手を貸したのかよ。許さない。許したくない。

「この通り、曽田のお友だちは最低だったわけ」

「最悪」

 眉間に思いっきり皺を寄せ、吐き捨てるように言えば

「ファンがしていいことじゃないよね。なにを思って、曽田さんに手を貸したんだか」

 ため息をつきながら、駿ちゃんが言った。

「金に目がくらんだんだろ」

 四月一日さんが指で示したのは、曽田さんがお友だちに茶封筒を渡す写真。多分、じゃなくて絶対中身はお金なんだろうな。

「ホントに、どうやって写真撮ったんですか……」

「ふふっ、俺の交友関係舐めてもらっちゃ困るぜ」

 顎に手を当ててカッコつけんな。それはイケメンだけがやっていい仕草だ。あっ、この人も一応イケメンだったわ。元アイドルだったわ。

「樹里ちゃん、やっぱり失礼なこと考えてない?」

「うん」

「即答かーい」

 もう否定するのも面倒になって、正直に答えたら「ショックだわ」と頭を抱えられました。やめなさいよ、下手なパフォーマンス。


「まっ、それはおいといて」

 立ち直り早っ。

「次に聞いてほしいのが……」

 そう言いながら四月一日さんは別のボイスレコーダーを取り出した。

 再生ボタンを押そうとする彼に、

「んにゅ、これは誰の?」

「取り敢えず聞いてみて」

「にゃっす」

 駿ちゃんは静かに頷いたのを確認した四月一日さんが、ボタンを押した。


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