第37話 バレた1/3
「ちょっとお願いがあるんだけど」
琴美さんとアカ姉さんを説得しに行った翌日。ライブの演出をスタッフさんと相談しに咲羅が消えたタイミングで、駿ちゃんに声をかける。
「どうしたでやんすか?」
首を傾げる彼に、
「アカ姉さんと翔ちゃんに、武道館ライブの席を用意してほしいんだけど」
「……」
さっきまでニッコニッコの笑顔だったのが一瞬で凍りついた。え、これはヤバイ感じ?
「バッグは先にスタジオに置いてきていいから。あっちの会議室で話そっか」
およよ、笑顔が非常に怖いんですが。私、怒られる?
向かいあって席につくと、駿ちゃんが真剣な表情で
「なにコソコソ動いてんの?」
げっ、なんでバレた。昨日の今日だぞ。どっから情報漏れたんだよ。
ここで無言になったら、やましいことがある、と自白しているようなもん。なにか言わなくっちゃ。
「いやあ、久しぶりにアカ姉さんたちに成長した姿を観てほしいなって」
「それだけじゃないでしょ」
一刀両断。
鋭い眼差しに言葉が出てこない。うげけ、これ、なに言ってもアウトなんじゃないの。
「正直に言いな」
「はい……」
もう話すしかない。
琴美さんとアイドルグループをつくりたいと話したこと、アカ姉さんに既に話に行ったこと。探偵の四月一日さんの情報を使って曽田さんを脅そうとしていること。
全部ゲロりました。はい、隠していても無駄な気がしたので。
「あのねえ、こういうのはさ」
怒られる。絶対怒られる流れだ。
俯いていたら、
「大人に相談しなさいよ」
「へっ?」
およよよよ、怒られなかった。ため息をつきながら、優しく言われましたよ。思わず顔を上げると、苦笑する駿ちゃんと目が合った。
「まあ拓哉から大体のことは聞いてるけど、俺っちに相談なかったのはショックだったわあ。そんなに信用ない?」
ショック?
「怒ってるんじゃないの」
「なんで怒るのさ。怒られるようなことしたの?」
「してないしてない」
ぶんぶん頭を振ると、
「気づいてないかもだけど、俺は曽田さんのこと嫌いなの」
「へっ!?」
またまた驚き。嫌いだったのか。というか、よく考えればわかるじゃん。咲羅のことを大切に思っている駿ちゃんが、彼女を精神的に追い込んで傷つけた曽田さんのこと、好きなわけないって。
「ごめん、ちゃんと考えたらわかることだった。曽田さんのこと好きだったら、あの人とアカ姉さんが通っていたホスクラのオーナーとの繋がりとか、ゴシップ記者の大森との繋がりとかを掴むために、力貸してくれないもんね」
素直に頭を下げると、
「んにゅ、そうでやんすよ。身内売ってるんだよ。裏切り行為だよ。バレたら俺っちクビだっての」
にゃはは、と笑って言うけれど、全然笑いごとじゃない。
「本当にごめん」
「謝らなくていいよ。それより、これからのことを考えよ」
「そうだね」
駿ちゃんが優しくて良かった。なんか泣きそう。
って、ちょっと待って。
「なんで私が隠し事してるってわかったの?」
咲羅はなんにも言ってこなかったのに。
「昨日さ、ちょっと用事があって寮に行ったのよ。そしたら茜ちゃんの部屋から出てくる樹里ちゃんたちを見かけちゃったんだよねえ。にゃはは」
なんたる不運。いや、幸運か。協力者が一人増えたんだから。
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