第37話 バレた2/3

「もうちょっと用心しなね。樹里ちゃんの行動をよく思わない人は、あちこちにいるから」

「気をつけます……」

 そうなんだよね。咲羅を説得できたら風向きはこっちのもんなんだけど、それまでは慎重に動かないと。駿ちゃんのクビが飛ぶし、私も危ない。

「マジで慎重にね。それで、次は翔ちゃんの説得に行くの?」

「うん。咲羅は一番最後の方がいいかなって」

「そうねぇ。俺っちも賛成。外堀埋めてからの方がいいよ。曽田さん説得してからでもいいかも」

 およ、良かった。咲羅の言いなりな曽田さんを一番最後にした方がいいかもしれないけれど、

「曽田さんを脅して、アイドルグループを作りますって公式発表してもらったら、流石の咲羅でも反対できないでしょ」

「そうそう」

 ごめんね、咲羅。裏切るような真似しちゃって。


「じゃあ、翔ちゃんのとこ行くんだったら、明日の夕方に××スタジオに行くといいよ。雑誌の撮影の仕事入ってるから、その帰り、捕まえな。あの子、家から近いから歩いて帰るだろうから」

 マジか。ナイス情報。やっぱり最初から駿ちゃんに相談しとけば良かった。勢いで行動しちゃダメだね。

「ありがとう。そうする」

「にゃっす」


「それじゃあ、練習してくるわ」

 そう言って席を立つと、

「待った。拓哉から伝言」

「四月一日さんから?」

 なんだろ。

 もう一回座るのも面倒なので、立ったまま話を聞く。

「明日の朝、事務所に来てほしいって」

 お呼び出しですか。

「それって」

「うん、証拠が揃ったってことだと思うよ」

 やっと、やっとだ。自業自得だけど、アカ姉さんのいろんな情報を暴いて人生を滅茶苦茶にしたホスクラのオーナーや、大森との繋がりが、漸く掴めたんだ。

 この情報を材料に、曽田さんを脅すことができる。アイドルグループを結成させることができる。

 絶対、やり遂げてみせる。


「俺っちも行くから。後で迎えに行く時間連絡するね」

 ぎゅっと拳を握り締める私に、優しく微笑みかけながら駿ちゃんは言った。

「うん、わかった」

「それと、今日持ってきたバッグ。明日は持ってきちゃダメ」

「ん? なんで」

 あのバッグは私にとって非常に大切なものなんですが。だって、咲羅から貰ったクマのストラップつけてるんだもん。

「なんでも。お願いだから、理由は聞かずに置いてきて。頼むから」

「……わかった」

 ここまで必死に言われたら、断れないよ。それに、駿ちゃんが理由もなくこんなことを言うわけないもん。絶対なにかある。

 今は聞けないけれど。

「ありがとうね」

 眉をハの字にした駿ちゃんは、手を合わせて首をコテンと傾けた。

 あんたもあざといな!! なんだ、岩本家はあざとい家系なのか。伝統芸なんですか。なんなんですか。もしかして、ご先祖様もアイドル的なことやってたりしますか。マジでなんなの。

 ちょっとムカついたのは、内緒ね。


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