第36話 望み2/4
「正直難しいと思うよ。でも、面白そう。そんなグループがあったら、私、入りたい」
「およよ、いいんですか!?」
マジか。まさか、琴美さんが賛成してくれるとは思わなかった。彼女の言った通り、難しいことだし。
「うん、Roseと兼任で良ければ。あと数年は卒業しないつもりだからね」
「そりゃ勿論」
咲羅が抜けた今、琴美さんまで抜けてしまったらRoseはフィオと同じように沈んでいくだけ。こんなタイミングで辞められないですよね。
「メンバーは、アカ姉さんと私と樹里ちゃんと、咲羅?」
「Roseの動画観ていて思ったんですけど、できれば翔ちゃんにもまたステージに立ってほしいんです」
「おーん」
頭を抱えられてしまった。ですよね。彼女はセンターの重圧に耐えきれずに自殺未遂して、卒業していったんですもんね。しかも、卒業してから1年も経ってない。
翔ちゃんの傷が癒えてるとは思えない。
だけど、私は彼女がまたステージに立つ姿を観たい。ううん、同じステージに立ちたい。
去年の、武道館でのライブと同じように。
「もし全員説得できたとして、アカ姉が今年で24歳でしょ。正直、年齢的にちょっと厳しめじゃない?」
腕を組み、声のトーンを落として言った琴美さん。
「はい。でも、男性アイドルって40代ぐらいでも続けられてるじゃないですか。不公平だと思ってて。女性アイドルだけ賞味期限つき、なんて。私は、その概念をぶち壊したいんです」
我ながら、力強く言ったと思う。最近では30歳前後までアイドルを続けている人もいるけれど、世間的には女性アイドルは20代で消えていくのが普通。
そんなもんクソくらえだ。
「私は、誰も抜けないグループをつくりたいんです。夢物語かもしれませんが」
笑い飛ばされてもおかしくない、夢物語。男性アイドルだって、メンバーが脱退するのは珍しくない。誰も抜けずに何十周年を迎えられるのは、ほんの一握り。
だけど、私はその一握りのグループをつくりたい。アカ姉さんや、翔ちゃん、琴美さん、咲羅と一緒に。
「たしかに夢物語かもしれないね。だけどね、私もね、樹里ちゃん」
琴美さんは微笑みながら、
「何歳になってもアイドルをやっていたい」
「琴美さん……」
笑っているけれど、その瞳は、言葉は力強かった。
「女性アイドルにも賞味期限なんてない、って証明したいの」
私たちで、そんなグループつくりましょう。
あぁ、琴美さんもそうだったんだ。一緒のこと考えてたんだ。それが嬉しくって、胸が熱くなる。
少し俯いて涙をこらえようとする私に、
「強くなったね、樹里ちゃん」
「え?」
「上から目線になっちゃうかもだけど、さくちゃんに引っついてばかりだった樹里ちゃんが、こうして自分の考えを強くもっていて。嬉しいし、羨ましい。私は行動に移さず、考えているだけだったから」
私の考えを否定せず、受け入れてくれた。もう、本当に泣きそうだ。
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