第34話 記念日1/6
咲羅は、1週間の予定だった撮影期間を3日で終わらせて、超特急で帰って来た。
玄関で出迎えた私を、無言で抱きしめて
「無事で良かったああああ」
号泣されました。誰だよ咲羅に事件のことチクったの。一生黙っておくつもりだったのに。今すぐ出てこいや。
それからというもの、事務所内でも1人きりになることを許してくれなかった咲羅。
ずーっとくっついて2人で行動していたせいで、『ニコイチ』とスタッフさんやタレントさんから呼ばれるようになったのは、また別の話。
2月1日(火)
付き合って1年の、大切な、大切な記念日。
プレゼントは勿論用意した。有名な人気チョコレートブランドの、高級チョコ。宝石みたいにキラキラしていて、見た目も味も最高と評判のやつ。
ちょっと前、咲羅がスマホをいじりながら「これ食べたいなあ」ってボソっと言っていたのを聞いたんだよね。
だけど、それを渡すだけじゃ物足りない。初めての大切な記念日なんだもん。サプライズ的なことしたいよねえ。
忙しい咲羅のために私がしてあげられることってなんだろう。
外食は忙しくて行けない。そもそも、咲羅は外食は好きじゃない。
どうしようかなあ。
考えに考えた結果、いつもより豪華な手料理をふるまうことにした。あ、これ私の案じゃなくて駿ちゃんの案ね。
毎日うんうん、唸ってるもんだから、見かねた駿ちゃんが助け舟を出してくれたのです。マジで感謝。
プラス、メニューも一緒に考えてくれて、試食もしてくれた。
え? 場所? 半同棲状態の家で試食を作るわけにもいかないから、そりゃあ、彼らの家です。彼ら、です。
そうです。松岡先生と駿ちゃんの新居です。目の前でずっとイチャイチャしてました。2人が幸せそうでなにより。
そんでもって、「うわあ、マジで上手い」「お前って料理できたんだな」と褒めてもらえました。ありがとうございます。この1年間、咲羅のために料理してきたおかげで、料理の腕がビックリするぐらい上達しました。
片付けは駿ちゃんが手伝ってくれました。松岡先生も手伝ってくれようとしたんだけど、「三春は座っててえ」と駿ちゃんに甘ったるい声で言われてソファで撃沈してました。
あんたらいつまで経ってもアツアツだな。凄いな。流石夫婦。あ、夫夫? いや、夫婦でいいのかな。駿ちゃんが圧倒的に奥さんっぽいし。見てたらわかります。
気づいたら薬指にペアリングをしていた彼ら。もう付き合ってる、というか夫婦になったこと、事務所内ではみんな知ってる。
男同士であることに対して陰口を叩いている人もいたけど、2人はそんなこと気にしなかった。まさに、外野の言葉はシャットアウト。無視し続けていたら、今では表立って言う人はいなくなった。
それには咲羅の力もおっきいんだけどね。
彼女は、陰口を言っている人を見つけ次第、年上だろうが年下だろうが「え? この時代にまだそんなこと言ってるんですか。考え方古っ。てか、ダッサ」と暴言を吐きまくった。
流石女王様。惚れ直しました。恥ずかしいから、言ってあげないけど。
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