第34話 事件4 *駿太*

*駿太*

 泣き止んだ樹里ちゃんから、「どうして駆けつけてくれたの」って聞かれたけど、まさか咲羅から焦った声で「樹里が襲われてる!」なんて電話があったとは言えなかった。

 ただ、「樹里ちゃんが叫ぶ声が聞こえたんだよ」とだけ言っておいた。微妙に納得してない顔をしてたけどさ、勘弁してよ。本当のこと言えるわけないでしょうが。


 咲羅がなんで樹里ちゃんの非常事態に気づいたのかなんて、聞かなくてもわかる。

 どうせ、樹里ちゃんの持ち物に盗聴器仕掛けてるんでしょ。

 それぐらいわかるっての。咲羅が生まれたときから見てきたんだから。親みたいに。

 これも犯罪だけど、まぁ、今回は見逃すかあ……彼女のおかげで樹里ちゃんを助けられたわけだし。電話がなかったら、樹里ちゃんは刺されていたわけだし。

 マジでギリギリセーフだった。

 俺っち走るの遅いのよ。だから、間に合ったのは奇跡。バッグも持ってて良かった。いや、なかったらなかったで、腕の一本や二本、くれてやる気ではいたんですけども。

 そしたら樹里ちゃん、自分のこと責めちゃうでしょ? あぁ本当にバッグ持ってて良かった。

 疲れたました。非常に。


 帰宅後、三春に「樹里ちゃんを守れたのは褒められることだけど、お前、バッグ持ってなかったらどうするつもりだったんだよ」って問い詰められて、腕のこと話したらバカ程怒られて、「もう二度と無茶はしません」って誓わされたのは、ここだけの話。

 鬼みたいに怖かった。冗談抜きで。

 


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