第31話 念願の1/2
12月27日(月)
私たちは曽田さんに呼び出され、学校終わりに事務所に向かった。
到着した私たちを待っていたのは、スタッフさんたち。「これに着替えて」って、私服っぽい衣装に着替えさせられた。
いやいや何事? どういうこと?
戸惑っているのは私だけじゃなかった。咲羅も、戸惑っていた。2人で顔を見合わせて首を
マジでなに? こんなこと初めてなんだけど。
部屋に入ると、曽田さんと駿ちゃんがいて、既に密着&動画チャンネルのカメラが回されていた。小さく会釈をして曽田さんに促されるまま椅子に座った。
静まり返った会議室で、口を開いたのは曽田さんだった。
「今日呼んだのはね、君たちに、ファンに重大発表があるからなんだ」
「重大発表……ですか」
「そうそう」
その割にはノリが軽いなアンタ。ちょっとイラっとしたわ。
「一体なんですか」
咲羅も同じだったようで、笑顔で尋ねていたけど、目はしっかり笑っていませんでした。ちょいちょい、カメラ回ってるんだから。やめなさい。
肘でカメラに映らないように小突くと、「ごめん」と小声で言われた。はい、素直でよろしい。
「では、ここでクイズです。重大発表とは、一体なんでしょうか?」
「は……?」
今度は私が小突かれる番だった。いやあ、仕方ないじゃん。まさかクイズ出されるとは思わないじゃん。この人、そんなキャラじゃないじゃん。
「えーなんだろう」
ついていけない私の代わりに、咲羅が首をコテンと傾けてアイドルらしい笑顔を曽田さんに向けた。
それに対して、曽田さんはニコニコと気持ちが悪い笑みを浮かべたまま。
「チッ」
ちょおおおい、さくちゃん。舌打ちはマズイって。これ生放送だかんね!? 編集できないんだってば。再び彼女を小突く。
「にゃはは」
このタイミングで笑い出したら、視聴者には意味わからないって。意味不明な行動はやめなさい。
おっと、話が脱線してる。えーマジでなんだろう……。ダメだ、全く頭が働かない。
「うーん」
わかんない。本当にわかんない。
一向に答えが出ないことに痺れを切らしたのか、曽田さんは
「特大ヒントね、君たちの目標はなんだい?」
キショイ笑顔のまま言ってきました。
え、目標?
「それは勿論、日本武道館……って、え? そんなまさか――」
「まさか、だよ」
思わず咲羅の方を見ると、視線がバチっと合った。いやあ私たちってば気が合うねえ、じゃなくて!
「え、ちょ、え?」
「あはは、慌てないで」
笑うな。腹立つな……それも今はどうでもいい。まさか、まさか。
「来年の2月、君たちには日本武道館でライブをしてもらう」
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