第30話 LIVE後1/2

 彼女たちの楽屋に小走りで向かうと、密着カメラと動画チャンネルのカメラが回る中、メンバーたちと写真を撮る咲羅がいた。沢山の花束を抱えて。

 うわあ、綺麗だなあ。ドレス姿なのも相まって、花束が滅茶苦茶似合う。その頬に涙が伝った跡がしっかりついていたとしても。

 ちょっと遠めから彼女たちを眺めていたら、

「あっ、樹里ちゃん! おいでよ、一緒に撮ろうよ!」

 琴美さんが爆音ボイスで声をかけてくれた。貴女ライブの後なのに、なんでこんなに声出るんですか。いや、ライブの後だからこそなんですかね。喉、ガン開きなんですかね。

 そんなことを考えていたら、咲羅が駆け寄って来て

「撮るよ」

 強制連行されました。

「いやっ、今はRoseのみんなで撮る――」

「みんなとは散々撮ったから! ほらほら撮るよ」

 なんとまあ、卒業ライブ終わりの推しと写真を撮ってもらいました。こんなことがあっていいんでしょうか。

「これ、現像して家に飾ろうね」

 目をキラキラさせて言われました。

「勿論」

 拒否するわけないでしょうが。恋人のお願い、というかお望みですもの。


「よしっ、じゃあ最後に、スタッフさんも入ってもらって……あ、樹里ちゃん逃げないで。みんなで撮りましょう!」

 いやいやいや、駿ちゃんや。逃げようとしてないんですけど。邪魔かなあ、と思ってどこうとしただけなんですが?

 どこにいたらいいかわからくって、後ろに下がろうとしたら、咲羅にぐっと腕を引かれてしまった。

「樹里は私の隣!」

 だからこれ、Roseのメンバーとスタッフさんとの写真でしょうが。私が隣じゃダメでしょうが。

 そんな私のツッコミも、「うるさーい」と一蹴されました。

 さっきまで号泣していた可愛いさくちゃんはどこへ?

「はい、撮りまーす。3、2、1!」

 カシャっ。

「ありがとうございましたー」

 咲羅はカメラマンさんに頭を下げ、密着&動画チャンネルのカメラに向かって手を振った後、さっさと着替えに行ってしまいましたとさ。


「あれ、泣きそうだから逃げただけだよね」

「にゃっす、そうねえ」

 駿ちゃんも同意見でした。ありがとうございます。


 着替え終わった咲羅は、メンバーたちと一通り抱きしめ合い、私と一緒に駿ちゃんの車に乗り込んだ。

 そして爆睡。

 さっきまでの女王様はどこへ行ってしまわれたのでしょうか。まぁ、寝顔が可愛いからいいけど。これは私にしか見れない特権だからさ。独り占めさせてください。

「俺っちもいるからね?」

「お静かに」

 なんであんたも爆音ボイスなのよ。ライブ出てないでしょうが。咲羅が起きちゃうでしょうが。

 私の静かな怒りを感じたのか、駿ちゃんはその後一言も喋らなかった。なんかごめん、マジで。


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