第21話 合同練習3/5

「あと、聞いたよ。ドラマのオファー、また来たって!」

「そうそう……って違う。ドラマじゃなくて映画」

「え、そうなの!? 凄いじゃん」

 まるで自分のことのように喜んでくれる華那ちゃん。可愛いなあ。さっきからそればっかり言ってるような気がするけど、別にいいでしょ。推しなんだもん。


 そうそう。なんと先日、駿ちゃんから映画の出演依頼がきたと聞いたのです。有名な脚本家さんと、監督さんの作品で、内容は学園もの。メインの女優さんの娘役。そこまで出番はないらしい。

 でも、まさか映画の仕事がくるなんて。受けるかどうか悩んだけれど、今は仕事をごのみしてる場合じゃない。出演することで、私たちを知ってもらうきっかけになるもん。咲羅も「ステップアップになるよ」って背中を押してくれた。「なんで私と一緒じゃないの」って拗ねられましたけれど。こればっかりは私がどうにかできる話じゃないから我慢してください。

 そんな彼女は彼女で、某大手動画配信サービス限定のドラマに出演することが決まっている。しかも、海外作品。警察ものらしい。その被害者役で、日本人として出演する。

 1話だけらしいけど、好評なら別の回への出演も夢じゃない、って駿ちゃんが言ってた。

 私と違って咲羅は英語ペラペラだからなあ。凄いわ。昔曽田さんが「咲羅は国内にとどめておくには惜しい存在だ」と仰ってましたね。たしかにその通りです。彼女はもっとグローバルに活躍できる。


 思考を軽く飛ばしているうちに、華那ちゃんは突然焦り出して、

「うぇっ、もう帰らないと! またね、樹里ちゃん!」

 元気よく手を振って、スタジオを出て行った。私が返事するの待ってよ。一人で完結して出ていくなよ。寂しいじゃんかよお……。

 そう思っていたら、

「樹里」

「うわっ」

 背後に咲羅がいました。成程、咲羅の姿を見て足早に去っていったのね。うん、大正解です。

「私たちも帰ろっか」

 ニッコリ笑って言う彼女。いや、その笑顔滅茶苦茶怖いんですが。さては、華那ちゃんと話しているところ見られてたな。ヤバいぞ。これは。頭の中で警報が鳴りまくっています。

「うっ、うん。帰ろう帰ろう」

 こりゃあ帰ってから、また謝り倒すことになりそうだなあ。別にいいんですけどね、割とすぐに許してくれるから……。

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