第22話 SNOW GIRLS

「寒っ」

 歌番組出演後、外に出た瞬間寒さに襲われた。

「もうすぐクリスマスだねえ」

 もこものこ上着とマフラーで上半身は完全防寒なのに、ミニスカートを履いている咲羅。見てるだけで寒いんですけど。いくらストッキングを履いてるとはいえ、ですよ。季節感どうなってんのさ。

 にゃははと笑う彼女に呆れながら、私たちは駿ちゃんの車に乗り込んだ。


 今日は、5thシングル『SNOW GIRLS』を初披露させてもらった。発売は来週の月曜日。その日も歌番組に出演して、その週の金曜日にはジャルの『Girls' Garden』を披露させてもらう。

 出ずっぱりだなあ。忙しいししんどいけれど、お仕事が沢山もらえて嬉しい。

 そうそう、11月下旬に公開されたDance動画、今までは私服で映像を撮っていたけれど、今回から衣装になった。着実に進化してるなあ。

「来週はジャルだね」

 温かい車内。マフラーを外しながら、咲羅が言った。

「うん、そうだね。楽しみ」

「にゃはっ、樹里ちゃんが仕事を楽しんでくれてるようで、俺っち嬉しいよお」

 嬉しそうな駿ちゃんに、私も口角が上がる。

「楽しくって仕方ないよー。あ、でもデビューライブが終わっちゃうのは寂しいな」

「んにょ、そうねえ。今月で終わっちゃうもんね。長いことお疲れ様でした」

 18日(土)、私たちのデビューライブは最終公演を迎える。

「あっという間だったなあ」

「ホントにね。もう12月なんて信じらんない」

「激しく同意」

 滅茶苦茶頷く私を見て、咲羅はにゃははと笑った。今日はよく笑うなあ。可愛い。

 そんな彼女の笑い声を聞きながら、SNSをチェックする。

 某有名ファストフード店のCM曲に起用された今回の曲。しかも、曲だけじゃなくて私たちも使ってもらえた。こんなに嬉しいことはないよ。


 さてさて、今日のパフォーマンスの評判はどうかな。「JURIめっちゃ踊り上手くなってる」「華開いたな。歌も頑張れ」「咲羅たんいつも通り可愛い素敵最高」「Sorelleらしくないけど、まぁこんな感じもアリか」。

 ふむふむ。おおむね高評価だね。

「なに? また『Sorelleらしくない』って書かれてんの?」

 横から私のスマホを覗き込んだ咲羅が、

「私たちらしさは私たちが決めるっつーの。バカかよ」

「さくちゃーん、口が悪いよー」

 運転する駿ちゃんから声が飛んでくる。

「いいじゃんべつに。ここには言う分には」

「ごもっともです」

 ファンの前で言ったら炎上確定演出。だけどここで言う分には全然OK。私は、咲羅が私や駿ちゃんの前ではアイドルの仮面を取っ払ってくれる、それだけで嬉しいんだもん。

 甘やかしすぎ? よくわかりません。はい。


「明日も明後日も、練習頑張ろうね」

 顎に両こぶしを当ててぶりっこポーズ。

「んんんん゛」

 うちの咲羅が可愛すぎる。やめてほしい。心臓がもたない。

 頭を抱えて悶える私を見て、彼女はまた「にゃははは」と笑った。

 

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