第19話 偲ぶ1/2
9月30日(木)
お別れ会には平日にもかかわらず、会場には沢山のファンが訪れた。ちゃんと公式動画チャンネルで生配信されるんだけどね。それでもやっぱり、直接お別れを言いたいってファンは多かった。
うん、その気持ちはわかるよ。ちゃんとお別れして、区切りをつけなきゃいつまでたっても前に進めないんだよね。
ファンも、メンバーも。
意識不明だった3期生の篠原りこさんは、無事に意識を取り戻した。でも、彼女はグループを辞める、そう表明していた。
勿体ない。そう引き止められたらしいけれど、自由に動かないカラダ、いつになったら復帰できるのかもわからない、しかも、フィオは活動休止。そんな中で、彼女が辞める決断をしたのは、当然なのかもしれない。
沢山の花に囲まれた3人の写真。みんな素敵な笑顔をしている。曽田さんのスピーチを聞きながら、咲羅の隣から眺める。
彼女たちがもういないなんて、未だに信じられない。抑え込んでいた悲しみが再び涙となってこみ上げてくる。
写真を見ていられなくなって、隣の咲羅に目を向ける。
彼女は、ただ真っすぐに写真を見つめていた。なにを感がいてるのか、その表情からは読み取れない。
咲羅がスピーチをするのは曽田さんの次。出番はもうすぐだ。
曽田さんの弔辞が終わった。咲羅が立ち上がり、写真の前に置かれたマイクスタンドへと向かう。
誰かのすすりなく声だけが聞こえる会場。
咲羅は手紙を広げ、ゆっくりと口を開いた。
「3人が亡くなって、1カ月が経ちました。今でも信じられません。もう瑠実さんたちがいないなんて。一緒に笑って泣いて、泥沼から這い上がろうともがいた日々、頑張った日々をとても懐かしく感じてしまいます。まさか、こんな形で別れることになるなんて……考えてもみませんでした」
手紙から顔を上げて、写真をじっと見つめた。数秒後、再び視線を手紙に戻し、続きを読み始める。
「瑠実さんと最後に話したのは、7月でしたね。11枚目のシングルが4位という結果に終わったとき、悲しそうな顔で『やっぱりファンは咲羅のいるフィオを望んでるんだね』『私たちは誰も代わりになれないのに』そう言っていました。でも、その後『正直、今はSorelleにもRoseにもおいていかれてるってわかってる。散った、終わった、そう言われてることも知ってる。だけど、これからだから。3期生の子たちも頑張ってる。だから、見守ってて。絶対追いついてみせるから。華開いてみてるから』。そう力強く言っていました」
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