第5話 飛び降りた3

 ティッシュで涙を拭いながら、ふと、この間スタッフさんたちがフィオとRoseの今後について話し合っていたことを思い出した。

 どうやら、フィオは全員振りを揃える方針になったみたい。曽田さんは『振りを敢えて揃えない』ことに重きを置いている。ライブのリハで咲羅は「振りが揃い過ぎってる」ってダメ出ししていたし。でも、咲羅という華を失った今、彼女たちはそうすることでしか這い上がれない。

 それに対抗して、Roseはセンターの咲羅を前面に押し出す戦略。メンバーの中には不満を持っている人もいるんだろうなあ。勿論ファンの中でも。

 だけど、彼女を差し置いてセンターの座を掴める人は今のところいない。

 もしかしたら、これから入ってくるかもしれないけれど。

 15日からRose3期生の募集が始まっているし。年齢は、満15歳~満18歳まで。研究生期間はなしで、合格後即3期生。咲羅は「即戦力しか取らない」ってライブの日に言っていた。

 そのときは「へー」としか思わなかった。でもそれって、咲羅も選考に関わっていくってこと?

 貴女と曽田さんじゃ、顔の好み違うかったと思うんだけど。重要なのは容姿だけじゃないんだけどさ。歌や踊りは伸びしろがあったとしても、生まれ持った容姿はどうにもならない。いや、整形すればいいのよね。実際、韓国のアイドルの中には整形している人もいるもん。

 でもなあ、日本だったら結構叩かれるもんね。二重ぐらいだったらそんなに叩かれ……ううん、叩かれるな。なんでそんなに厳しいのかな。

 私は整形肯定派だから、叩く人の気持ちが全然わかんない。美しくなるために努力してなにが悪いの? 「ブサイク」「整形しろ」って言うくせして、本当に整形したら叩かれるって意味わかんない。

 って、今はそんなこと別にどうでもいいか。


 そういえば、ライブの日咲羅は「フィオとシングルの発売時期を被せていく」とも言っていたけれど、今回は被んないんだね。というか、フィオシングル最近出してないよなあ。

 最後に出したのって、2019年11月下旬だよね。あ、1stアルバムを2020年3月に出してたわ。でも、シングルはそれ以降出してない。2020年10月にフィオとRoseの合同グループ『Giardino Florealeジャルディーノ・フロレアーレ』で『咲き誇れ』を出しているとはいえ、滅茶苦茶間空いてるじゃん。1年ちょっとシングル出してないって、ヤバすぎん?

 憶測でしかないけれど、センターの咲羅が兎に角忙しかったのが理由の一つなんだろうなあ。

 そんでもって、今は咲羅が抜けた穴を必死に埋めて建て直してる最中だもんなあ。新曲をリリースする余裕なんてないよね。

 7月に全国ツアーやるみたいだし。流石にそれまでにシングル出すと思うけど、誰がセンターになるんだろ。やっぱりリーダーの瑠実るみさんなのかな。まぁ、華那さん以外がセンターなら、別にどうでもいい。興味ない。

 曽田さんもRoseに力を入れているみたいだし。


 よし、フィオのことは一旦おいといて、もう一回MV観よう。途中から涙で画面観れなかったし。

 ティッシュをゴミ箱に捨てて、私はもう一度再生ボタンをクリックした。


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