第6話 MV公開1/2

 5月に入り、私たちSorelleは忙しさを増した。デビューシングルのMVも公式動画チャンネルに投稿されるdance動画も完成してるから、そっちは問題ないんだけど……。ヤバいのは2ndと3rdの方。

 4月下旬に3カ月連続リリースすることと、発売日をお知らせしちゃってるから、それに間に合わせるためにスタッフさんも私たちも必死。

 咲羅いわく、4月の時点で2ndと3rdの発売日を発表したのは、スタッフさんのケツを叩いて追い込むためらしい。

「それってもしかしなくても、曽田さんの――」

「yes」

 やっぱり曽田さんは鬼畜だよ……。おかげで私たちはスケジュールキツキツ。それでも、やっていくしかない。

 私たちには立ち止まっている余裕はない。まだ日本武道館の日程は決まっていないけれど、数か月後にそこに立って、観客で埋めなきゃいけないんだから。


5月17日(月)

 SorelleデビューシングルのMV動画サイトver.が公開された。私と咲羅は、何故か今回も私の部屋でPCで試聴することになった。

 引っ越してきてからというもの、私が咲羅の部屋に行くよりも彼女が私の部屋に来る頻度が多いんですけど……かなり。なんででしょうね。不思議ですね。


 咲羅用にコーヒー、私はオレンジジュースをお揃いのコップに注いで、ソファで待つ彼女に手渡す。

「ほい」

「サンキュー」

 彼女はそう言いながら、動画投稿サイトの検索欄に「Sorelle 未来LIGHT」と入力した。

 画面が切り替わり、一番上に表示されたMV。数分前に公開されたばかりだから、そこまで再生されていない。

 あー、どんなコメントが書かれてるんだろう。不安でしかない。来週の月曜日には初めての歌番組出演が控えている。ここで辛辣なコメント書かれていたら、立ち直れない。

 私の不安を感じ取ったのか、咲羅が

「もしアンチコメントが書かれていたとしても、スルーすればいいんだよ。身になるコメだけを受け入れればいいの」

 優しく左手を握りながら言ってくれた。

 そうだよね。立ち直れない、なんて弱気じゃダメだよね。

「ありがとう」

 2人ならどんなことでも乗り越えられる。今までもそうやってきたんだから。これからも、それは変わらない。

「じゃあ……再生するよ」

「んにゅ」

 彼女が頷いたのを確認して、動画をクリックした。


 

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