第6話 MV公開2
約4分の動画。私たちは顔を寄せ合って画面を見つめる。
始まりは暗く、ミディアムバラード寄りのテンポ。それに合わせたほの暗い照明の中、
「私を包み込むfire」
歌詞に合わせて私たちの周りを炎が包む。
これさ、CGじゃないのよ。ドラム缶の中や背後で火がたかれて、滅茶苦茶暑かった。衣装が燃えちゃうんじゃないかってヒヤヒヤしながら踊ったんだから。
どうやら曽田さんは、SorelleではCGを極力使わない方針でいくみたい。そこもフィオやRoseとの差別化だね。衣装やハモリに加えて。
そして、MVで私たちはなるべく平等に映るように配慮されている。最初は結構咲羅が映っているシーンが多かったんだけど、
「私ばっかり映してないで樹里のシーンもっと増やせよ」
ってキレた。マジギレしてた。怒ってくれて嬉しかったけどさ、あんなに怒りを
Bメロ最後の
「未来を照らしていくLIGHT-ah-ah-ah-yeah」
咲羅の綺麗な高音が活かされたパートが合図となって、曲調は一気にアップテンポになった。
それまでソロショットやツーショットばかりだったけれど、サビはほの暗い照明の中での激しいダンスシーン。全身真っ黒だけど、凄く画面映えしてると思う。我ながら。
なんか不思議な感じ。咲羅のソロのバックで踊っているときは基本的にキャップを被っていたから、こうガッツリ映っていると……なんというか、ちょっと恥ずかしい。
早く慣れなきゃいけないんだけどね。
あと、やっぱり咲羅のダンス、力強くて綺麗だなあ。自分と比べちゃって、嫌悪感に
思わずつきそうになるため息を堪える。
だってここでため息をなんてついちゃったら、咲羅が絶対フォローしてくれるに決まってる。それは嬉しいんだけど、実力の差は明らか。フォローされたらされたで悲しくなるし、彼女に甘えてばかりもいられない。
動画を観終わった後、腕を組みながら
「来週の初披露までに、改善しなきゃいけないところ結構あるわー。
「いやいや、どこにそんな要素あったのよ」
「サビの腕のところと表情。全然なってない」
完璧な貴女がそれを言いますか。それを言われたら私は改善点だらけなんですが。腕の動かし方も、表情もなにもかも、酷い。
落ち込む私に、
「樹里は樹里で自分の改善点見つけたんでしょ? だから、お互い頑張ろうね」
ふわりと優しく微笑んだ。
「うん、そうだね」
来週、歌番組出演後に公開されるdance動画のことを思うと気が重い。左程多くはないダンスシーンで大量に改善点が見つかっちゃったんだから、ダンスメインの動画が公開されたら……あぁ、本当に気が重い。
チラっと見たコメントには「JURIちゃんって咲羅の隣に並ぶとなあ」「実力差ヤバくない?」って。本人が自覚してんだから言うな。言ってくれるな、頼むから。
もうdance動画を撮り直すことはできない。でも、歌番組に向けては各所改善できる。咲羅が自分の部屋に戻ったら、もう一回MVを観て改善点を書き出そう。
そうやって努力していくしか、私にはできないんだから。
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