第4話 再会2/3

 キュートな顔立ちに、パッチリな瞳。3期生の中で……いや、フィオの中で一番可愛い。うちの子が一番可愛い。絶対そう。異論は認めない。

 あと、私たちが練習した動画は、結局Sorelleの枠で投稿された。なんでかわかんないけど。咲羅滅茶苦茶嫌そうな顔してたけど。

 そりゃそうですよねー、貴女華那さんのこと好きじゃないもんねえ。けれど、ファンはそんなこと知らないから『ここの絡み新鮮』『樹里ちゃんが教えてるの新鮮』『2人とも可愛い』などなど、好意的なコメントを書き込んでくれていました。

 感謝感謝。


 軽く思考を飛ばしている私に、華那さんが口をもごもごとさせて

「あにょ」

 噛んだ。噛んだよな。だって、更に顔が赤くなってるし。顔伏せちゃったけど、バレバレですよ。可愛いけど、あがり症なのかな。大丈夫かな。ちょっと心配になる。

「あの」

 うわあ、上目遣い。やめて! あざとい!

 突然の推しからのファンさに胸をドキドキさせていると、

「もし良ければ敬語、やめてもらえませんか……私の方が年下ですし」

「いや1歳しか変わらないですし」

 お願いだから上目遣いで言ってこないでほしい。即答で「はい!」って言いたくなる。

「いやいやいや、それに樹里さんの方が先輩ですし」

 うーん、諦めないな。ちょっと頭を悩ませる。私の方が咲羅の動画に出てる分ファンからの認知は先だけど、研究生として活動していたこを考えると、華那さんが先輩になるでしょ。

 あーでも、Sorelle結成日が3月1日で彼女が昇格したのはつい先日だから、私の方が先輩になるのか?

 ややこしいなこれ。なんかもう考えるの面倒になってきた。

 よしっ。

「じゃあ……私も敬語をやめるので、華那さんも敬語をやめましょうよ」

「えっ、いいんですか!?」

 声が裏返りながら口に手を当てて、大きなお目めが飛び出しそうなくらい驚かれた。

「勿論」

「やっっっっったあああああ!」

 廊下中に響き渡る声で、華那さんは跳んだ。文字通り、跳んだ。

 いやだから、ここ事務所なのよ。そんなにおっきな声出したらダメなんよ。

 そんな風に冷静に頭の片隅で考えながら、ウサギみたいにピョンピョンと跳ぶ彼女の姿に、考えるのが面倒になったからなんて、口が裂けても言えないなあこれ。こんな風に喜んでもらえるなんて嬉しいし。

 まあでも、推しと距離が縮まるって最高だよね。普通なら、握手会とかライブに何度も参加して認知されて、そっから少しずつ少しずつ距離が縮まっていくもの。

 私は立場を利用して、工程すっ飛ばさせていただきます。職権乱用でございます。

 ごちゃごちゃ考えるのは私には向いてないし、推しとタメ口で喋りたいし。


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