第30話 咲羅の本性5 *咲羅*
茜が研究生に降格することも、翔が卒業することも1gだって悲しくない。
やっと私が樹里の一番になれるんだから。
あの曲だって、ファンやあの2人のために書いたんじゃない。私が華麗に復活する為でもあり、世間が私に押し付けたイメージを破る為の、ただの道具。
私は神様でもお姫様でも天使でもない。女王なのよ。それをわからせるためのソロ曲。
そして、それが私の最高の復帰舞台。
私の案を曽田は快諾してくれた。スタッフも私の言いなりだった。みんな私のこと大好きだもんね。
曽田には苦笑いしながら
「意外と腹黒いよねえ」
「一番腹黒い人が何言ってんだか」
ふん、と鼻を鳴らすと、
「最近、裏では『女王様』って呼ばれてるの知ってる?」
「へー」
この場合の女王様は、絶対いい意味で使われてない。でも、
「別にどうでもいいって感じか」
「まあね。正真正銘の女王様になってみせるんだから、裏で言われようが表で言われようが一緒でしょ」
そう言って微笑むと、
「相変わらず狂ってんねえ」
全く失礼な人。
「なんか文句ある?」
って返したら腹を抱えて笑ってた。
「女王の座は私だけの物。よく覚えておいて」
そう言って会議室を出た。
これだけ言ってると曽田を完全に信頼してるみたい。でも違う。恩人ではあるけれど、ただの利用できる人。
飽きたらポイって捨ててあげるから、待っててね。
事務所の廊下を歩きながら考える。私が欲しいものはたった一つ。女王の座だけ。だってそれさえ手に入れば、全てが私の思うがままでしょ? 誰にも、私と樹里の関係に口出しなんてさせない。
アイドルは恋愛禁止だなんて、私が生まれる前に勝手にどっかの誰かが決めた話。私には関係ない。樹里が漸くアイドルになってくれて、私たちの想いも通じ合った。これからは恋人として、同じアイドルとしてずっと一緒にいられる。
でも、足りない。
樹里の一番になりたい。私にもっと夢中になって、私だけを見てほしい。私だけを愛してほしい。貴女の全てがほしい。もっと堕ちてきて、まだまだ足りないよ。深くまで引きこんで、私だけのものにして閉じ込めたい。
なんて、叶わない願いだけど。いつかは絶対叶えてみせる。私に不可能なんてないんだから。
それまでは、樹里にだけは、本当に棘のない花道だけを歩かせたい。
彼女は私を天使だとか崇めるけれど、私にとっては樹里こそが天使。大げさ? 全然違うよ。女神であり天使なんだから。
彼女がアイドルになってくれたんだから、もうグループなんてどうでもいい。解散してしまってもいい。私がグループでやりたいことは終わった。未練なんてないからすぐに卒業を発表しても構わないん。曽田も認めてくれてるし。
でも、そしてたら翔の卒業と被る。インパクトが薄れちゃう。
もっと劇的に、注目してもらえるように情報は小出しにしないとねえ。
本当はわかってる。樹里が私の本性に、演技に気がついているってこと。それでも知らないふりを続けてくれている。味を占めた私がわざと彼女の前でだけ本性を少しずつ出すようになってからも、知らぬ存ぜぬを通してくれている。
ああ、もう。本当に愛おしくてたまらないよ。貴女だけは、いつまでも私に振り回されて、手のひらで転がされていてね。
愛してるよ。
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