第30話 咲羅の本性4/5 *咲羅*
翔の異変には気がついてた。だから心配しているような素振りもしたし、声かけだってした。
自殺を図る可能性だって考えてた。でもまさか実行する勇気があっただなんて。そこは尊敬するけど、やりすぎ。お風呂場で発見したときは、目の前に広がる血の海にゾッとしちゃった。
でも樹里にとっては私が一番心配。翔に引っ張られて自殺しちゃうんじゃないかって。樹里が何度も電話をかけてくるから、家に突撃してくることは察するに
死ぬ気なんて毛頭ない。そう匂わせるだけで、彼女は本気で心配してくれるから。私の手のひらで踊ってくれる、純粋無垢な愛しい人。
だけど、今回は世間にも心配してもらう必要がある。翔が死ななくてよかった。だって死んじゃったら、私より目立っちゃうじゃん。ある意味伝説になってRoseの歴史に永遠に名前が残っちゃうじゃん。そんなの最悪。
伝説になるのは私一人でいい。
どういう風にセンターに返り咲けば世間の同情を買えて、話題になるのか。
悲劇のヒロインの復活劇。みんな、そういうのが好きでしょ?
そのために、こっそり曽田に相談した。一人で考えるには限界があったし。「伝説の復活劇がほしい」「普通に復帰するだけじゃ面白くないでしょ?」って言ったら、「いい考えがある」って。
その結果が通り魔事件。手加減してもらうように何度も打ち合わせしたし。楽しかったよ。ちょっぴり失敗したのは、人混みが本当に少しだけだけど、怖くなってしまったこと。ハサミとはいえ刃物は怖いね。だから、自分で手首を切った翔は凄いよ。その点だけは尊敬する。マジで勇気あるね。
髪の毛を切ってもらったのは、まあそろそろイメチェンしたかったから。
そして、無期限の休養に入らせてもらった。これで世間の目は私に向く。私も悲劇のヒロインになれた。
無期限って言っても、ライブで復帰することは曽田と
自殺未遂だなんて、余計なことをしてくれたよ。本当。
通り魔事件の後、私は部屋に引きこもって、どうすればインパクトのある復帰を見せられるのか考え続けた。そして、翔の自殺未遂を利用させてもらうことにした。
曽田に直接、彼女がアイドルを辞めるように仕向けてもらった。武道館の前で翔と直接会って話をしたのは、辞める意思があるのか確認する為。
念押しって大事でしょ?
あと嬉しかったのは、樹里が今まで以上に私を心配して傍にいてくれるようになったこと。ずっと見張っていてくれてる。嬉しい。
一生懸命私のためになにができるか考えて、悩んで。漸く「アイドルになる」という答えに辿り着いてくれた。永遠に私のものになってくれた。
背中を押してくれた琴美さんにも大感謝。次のシングルでもフロントにしてあげよーっと。
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