第28話 アンコール:咲き誇れ2
曲が終わると、翔ちゃんが咲羅に大粒の涙を零しながら抱き着いて、その次に瑠実さん、琴美さんが2人にくっついて……とみんなが抱き着き始めた。全員泣いてるから滅茶苦茶だけど、別にいいよね。最後だもん。
私も近づくと、メンバーが私を最前列へ押し出す。へ? なんで?
疑問に思いながらも流れに身を任せていると、メンバーに抱き着かれながら涙で顔をぐちゃぐちゃにした翔ちゃんが
「樹里さんも支えてくれてありがとう」
折角泣き止んだのに、また涙が頬を伝う。こんなこと言われたら、泣かずにはいられないじゃん。
みんながぐすんぐすんいいながら泣いている中、咲羅がマイクを口に当てて前に出た。
「私たちアイドルは、大事な青春をアイドルに捧げています。命を、魂をかけてアイドルをしています。選抜に中々選ばれない子も、MVにほとんど映れない子も、全力でアイドルをしています。だから、ファンのみなさんも全力でついてきてください」
涙をこらえて、勢いよく頭を下げた。私たちも一緒に頭を下げる。
一瞬の静寂。
それを破るように「応援してるぞー!」と力強い声が聞こえた。それに続くように、いろんな方向から「応援してる!」「頑張って!」「大好き!」様々な声援が聞こえる。
顔を上げた咲羅は、やっぱり泣いていた。今だけはその涙が演技かそうじゃなか、なんて考えないでおこう。この光景を胸に焼き付けておくために。
「今日は本当にありがとうございました!」
みんなで手を繋ぎ、ペンライトの海を眺める。私の挑戦は始まったばかり。これからもこの光景が見られるように頑張ろう。
「笑顔で終わりたいと思います、ほら、ファンのみんなも笑って!」
「あんたが一番泣いてんのよ」
琴美さんにツッコまれ、会場が笑で包まれる。うん、こうやって笑って終わった方がいいよ。翔ちゃんのためにも、ファンのためにも。
「みんな、生きててくれてありがとう! また生きて会おうね!」
「「ありがとうございました!!」」
全員で御礼を言ってお辞儀をし、顔を上げる。みんな涙で頬が濡れていたけれど、晴れ晴れとした表情で笑顔の花が咲いている。そして、ステージが暗転した。
翔ちゃんの最後の、私の最初の、咲羅の復帰ライブがこうして幕を閉じた。
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