第27話 アンコール *茜*

*茜*


 特別に関係者席から見せてもらった。ファンの子たちが私に気がついていたみたいだけど、そんな視線気にならないぐらいライブに夢中になった。

 やらかしたからライブを観せてもらうなんて絶対無理だと思っていたけど、どうやら咲羅が手をまわしたみたい。

 アンコールで咲羅のパフォーマンスが力強くて、見蕩れてた。終わった後、ふと頬を拭ってみたら涙が手の甲についた。

 いつの間にか泣いてたんだ。ずるいよ、あの歌詞。私の名前なんて入れちゃって。

 それにあのMC。

 ねえ樹里ちゃん、私漸く気づいたよ。咲羅が天使なんかじゃないって。実は悪魔だってこと。

 私を許して、好感度上げてんじゃん。

 でも、不思議と腹は立たない。あーあ。怒れたら良かったんだけど、利用してくれるだけで嬉しいなんて。これじゃあ私がドMみたいじゃん。

 きっと私が咲羅と同じステージに立てることは二度ない。けれど、足搔いてみたっていいじゃんね?

 だって私、咲羅のオタクなんだから。強火担よ。もう私には失うものはないから、遮二無二やってこう。見苦しくたって、負けない。

 できることならあんたとの出会い、やり直したかったわ。

 これから最後の曲が始める。

 私の代役は樹里ちゃんがやってくれるって聞いた。

 あの子なら絶対完璧にこなしてくれる。今までレッスンや動画であの子の才能は確認済み。

 頑張れ、あなたなら大きくて可憐な華を咲かせられるよ。咲羅をアイドル界のテッペンに導いてやって。


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