第24話 アンコール:ソロ4
曲が終わると一瞬静寂に包まれ、メインステージ全体の照明が点き咲羅が王冠脱いだ瞬間、割れんばかり拍手と叫び声にも似た歓声が巻き起こった。「おかえり!」という叫び声も聞こえる。
誰もが待っていたのだ。女王の帰還を。唯一無二の存在が帰ってくることを。
私もティアラを脱いで、咲羅と共に駿ちゃんに手渡すと、彼を先頭に男性陣は舞台袖へとはけた。
歓声に応えて手を振る咲羅を見つめながら、彼女の居場所はファンに囲まれたこの場所なのだと再確認する。
あっという間だったな。ファンのみんなも同じ気持ちだと思う。一瞬に感じるくらい魅せられて、心を掴まれちゃったでしょ。
休養明けだとは感じさせない、圧巻のパフォーマンスだった。
うちの咲羅凄いでしょ。誇らしいのと、緊張から解放されたのも相まって、頬が緩んでしまう。
いつまでもこうしていたいけど、そろそろ私は後ろに下がらないと。
そのときメインステージ中央の階段状になったセットが左右に割れ、琴美さんを先頭にジャルのメンバーが登場した。会場がまたざわめく。
だって琴美さんの後ろを歩いていたのは、翔ちゃんだから。そうだよね、出演は告知してあったけど、今まで出てこなかったから、「もう翔ちゃんは出てこない」って諦めてたファンもいたはず。漸く姿を現した翔ちゃんに、翔ちゃん担は号泣してる。
ステージ袖からフィオとRoseのメンバーが登場し階段に並び始めたから、邪魔にならないようにそっと下がろうとすると、
「よく頑張ったね」
咲羅と一緒に琴美さんに抱き締められた。
「凄かった、よく頑張った」と繰り返し言われて頭を撫でられて、思わず泣きそうになるけど、まだ泣くわけにはいかない。
翔ちゃんだって涙をこらえている。
琴美さんから解放されると、咲羅がヘッドセットを外して他のメンバーからハンドマイクを受け取った。
これから咲羅のMCだ。今度こそ後ろに下がろうとすると、突然咲羅に恋人つなぎをされて動けなくなった。
「ちょっ――」
「ここにいて」
戸惑いを隠せない私に、彼女は小さな声でそう言った。
えーあのー、モブはさっさと下がって着替えに行きたいんですけれども。って、違うな。これから私はモブじゃなくなるんだ。咲羅の隣に堂々と立っていなくちゃいけないんだ。
多分、今日私とユニットを組むことを話すんだろうし。
頷くと、咲羅も微笑んで頷き返してくれた。
私たちは手を繋いだまま、前を向く。咲羅は反対の手でマイクを口元にもっていき、微笑みを浮かべたまま話し始めた。
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