第24話 アンコール:ソロ3/4

 2番をセンターステージで披露した後、咲羅はCメロ(間奏)でメインステージに花道を優雅に――ランウェイかのように歩きながらファンへ手を振ったり、投げキッスをしたり、ファンサをしまくっていた。

 羨ましいなあ、おい。てか、あんた自担には塩対応でしょ。突然どうしたのよ。珍しいファンサに、咲羅担泣いて喜んでんじゃん。

 そう思っていると、咲羅と視線がぶつかった。ヤバっ、羨ましがってるのがバレる。って思っていたら、なんと投げキッスされた。

 その瞬間頭がパーンとスパークして、全身を甘いしびれが包み込む。多分心臓も弾けた。

 絶対顔が赤くなってる。ダメダメ、今はパフォーマンスに集中しないと。

 焦る私とは対照的に彼女は、ファンサをしまくりながら、両手を大きく広げて上下させた。その姿は、ペンライトが輝く海で天使が翼を広げているみたい……ううん、違う。今まで押し付けられてきた『天使』『お姫様』の皮を破って、新たに飛び立とうとしてるんだ。

 今までだったらうっとり見蕩れてしまうけれど、ちゃんとパフォーマンスを続けられてるんだから、死ぬほど練習してきて良かった。やっぱり練習って大事よね、うん。

 彼女はメインステージ手前で肩のマントを取り外して花道横のスタッフに投げた。


 さあ、いよいよラスサビだ。

 会場のボルテージは最高潮を迎えている。

 力強く踊り、華麗にターンをキメる咲羅は、女王様そのものだ。今の咲羅に敵うアイドルは絶対にいない。

 これは伝説のパフォーマンスになる。

 後ろで踊りながら、そう確信した。もしかしたら新しい咲羅を受け入れられない人がしれないけど、そんな人は放っておけばいい。言いたいヤツには言わせておけばいい。

 今この瞬間、新たな未来を切り開こうとしている咲羅を止められるヤツなんて誰もいないんだから。

 そんな彼女においていかれないように、私も、他のバックのみんなも必死で食らいついていく。この後のことなんてなにも考えず、がむしゃらに踊っる。

 ラスサビで一瞬下がった加賀谷さんとcinqの廉くんがティアラをステージ袖から急いで――それでも自然に、スタッフさんから受け取って戻ってきた。


 夢のような時間に、私のセリフで終わりを告げる。

「you're the queen」

 歌声が消える前に、私が一歩前に出て咲羅に並ぶ。彼女が左腕を腰に当てて、私が右腕を腰に当てた。

 加賀谷さんが咲羅に王冠、私にティアラを被せ、駿ちゃんと松岡先生が向かい合うように、私たちの真後ろで片膝をつく。私たちを取り囲むように残りのバックダンサーも膝をつき、駿ちゃんの太ももには咲羅が、松岡先生の太ももに私が座って足を組んで、私たちのステージが幕を閉じた。

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