第24話 アンコール:ソロ2/4 *咲羅*

*咲羅*

 イントロが流れ出し、会場がざわついているのが聴こえた。そりゃそうよね、私が今日アンコールに登場するなんてファンのみんなは知らなかったんだから。

 私の名前を呼ぶ歓声が聴こえる。あぁ、ほんの少しファンから遠ざかっていただけなのに、懐かしく感じるのは何故なんだろう。

 堂々と見えるようように、足を組んで片肘をついて。ドレスを着ているから足なんて見えないだろうけど、気持ちの問題。

 私は女王なんだから。

 ステージがせり上がっていくと同時に、私の頭は曲に没入していく。

 さぁ、私が会場を支配するときが来た。主役は私よ。


 いつもはパフォーマンスをしているときの記憶ってほぼない。でも、メインステージで1番を歌い終わって振り返ったとき樹里の顔が一瞬見えて。アイドルになって初めて「楽しい」と感じた。

 こんな気持ち初めて。

 高揚する気持ちに任せて、樹里の手を掴んでセンターステージへと走り出した。多分ビックリしてるだろうけど、私の片翼になったんだから離してなんてあげない。

 予定外の行動にもバックダンサーのみんなはついて来てくれた。流石、元アイドル&現役。

 みんなの歓声が聴こえる。

 あぁ、私の居場所やっぱりここだ。誰にも邪魔させない。他のヤツには、絶対に手放したり譲ったりなんかしてやんない。

 どう? 私の復活劇は。素敵、の2文字じゃ言い表せないぐらいでしょ。

 絶対に今日のパフォーマンスを伝説にしてみせるから、もっと酔いしれてよ。

 そのために、今日は大サービス。いつもは『自担にファンサしない咲羅』って有名だけど、特別にたっぷりファンサービスをしてあげる。

 きっと今の私に、これからの私に拒否反応起こして離れていくファンは少なからずいる。

 それでも、私は私。これが本当の私。新しい私を受け入れなさい。

 もう大人に振り回されるのはやめた。自分の道は自分で開く。それに、私には樹里がいる。

 ふと樹里を見たら羨ましそうな顔をしてた。笑っちゃう。どんなにファンへ愛嬌を振りまいても、心は樹里のものだっていうのに。

 仕方ないなあ。樹里にもファンサしてあげる。そしたら目をまん丸にして、照れてんのか知んないけど顔を赤くしていた。

 可愛いねえ。

 いつも私に可愛いっていうけどさ、貴女の方がよっぽど可愛い。

 もっと私に振り回されてよ。ファンのみんなも、樹里も。


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