第22話 ライブ当日2/4

 リハーサルの時間になり、私たちは自分たちの番がくるまで観客席から彼女たちのパフォーマンスを観させてもらう。

 フィオはアカ姉さんがいないけど、リーダーの瑠実さんを筆頭によく頑張ってるし、3期生の子たちもちゃんとついていけてる。一方Roseは、センターを任された琴美さんが華やかさを魅せてくれてる。

 Roseとフィオのメンバーをシャッフルした曲もミスなく、みんなそつなくこなしていく。

 リハだからラフな格好だけど、やっぱりみんな凄いキレイだし振りは揃ってる。でも……なんて言ったらいいんだろう。

 腕を組んでうんうん唸る私をチラリと見た咲羅が、

「個性ないでしょ」

「あ、まさしくそれだわ」

 彼女は険しい顔をして話を続ける。

「Roseはさ、琴美さんがいるからいいんだよ。あの人は大器晩成型だっただけで、元々アイドルの才能と華を持ち合わせている人だから。ちゃんと曲を自分のものにできてるし、所々振りを揃えつつも自分の色を出せてる。だけど、フィオは違う」

 ため息をついて、

「散々お世話になった瑠実さんには申し訳ないけど、今のフィオには華がない。アカ姉がフィオの華だったんだよ。素行が悪くて選抜から外されちゃってたのは本当に残念だった」

 全然残念と思っていない顔――片方の口角を上げて、しれっと言う。あのさ、口調が楽しそうなのよ。声のトーンもちょっと上がってるし。自分が一番、華だって思ってるくせに。ホント、私の前だと嘘つくの下手だよね。


「フィオはもうは沈んでいくだけかな。夢と希望を胸にアイドルを目指している研修生には可哀想な話だけど。たしかに振りを揃えるのは大事だよね。でも、うちはそうじゃないでしょ。個性が大事でしょ。あの子たちはそれをわかってるはずなのに、振りを揃えることに意識が向き過ぎてる」

 あれじゃあ全員モブだよ。

 笑みを消して、能面のような表情でステージを見つめる。

「こっからはどんどんRoseに追い抜かされていくよ。ここだけの話、4月からはうちでも3期生の募集が始まる。しかも、研究生期間なし。即戦力しかとらない」

「その情報のソース、絶対曽田さんでしょ」

「他に誰がいんのよ」

 欠伸あくびをしながらカラダを完全にこちらに向けて、咲羅は話し続ける。

 さては、もうステージ観るのに飽きたな?

「それに、私がいる間はあの子たちに負ける気はない。容赦はしない」

 瞳の奥に炎が見える。ああ、こりゃ本気だ。

「今まではフィオとRoseのシングル発売日はずらしてもらってたけど――」

「これからは被せていくんだね」

「そう。どっちが格上なのか、わからせないとね」

 フィオを全力でつぶす気だ。発売日を被らせるなんて正気の沙汰じゃないけど、曽田さんなら咲羅が言ったら叶えてくれるんだろうな。

 首をこてんと傾けて笑ってるけどさ、目が笑ってないのよ。あざといポーズで誤魔化せてないのよ。

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