第22話 ライブ当日4

 昼食の後に駿ちゃんに来てもらって、リハのときに撮ってもらっていた動画を観ながら最終確認をした。cinqの5人がいないからバックダンサーの動きが歪に見えるけれど、頭の中で隙間に彼らの姿を当てはめれば問題ない。

「うん、完璧」

「そうでやんすね」

 咲羅が満足げに頷き、駿ちゃんも松岡先生にバックハグされながら頷いた。おい、堂々とイチャイチャすんな。毎回のことだからツッコんでたらキリがないんですけどね……私も咲羅と手を繋いでるから人のこと言えないけども。

「じゃあ、また後で」

 動画を観終わってもイチャつく私たちに知らんぷりをきめて、加賀谷さんがさっさと楽屋を出て行った。冷たいなあ、とは思いません。だって、あの人今日もニヤついてましたから。どんだけ駿ちゃんと松岡先生のこと好きなのよ。

「よし、2人とも出てけ」

 松岡先生におんぶされていた駿ちゃんに、手で追い払う仕草をする。いつの間におんぶしてたんだよ。

「にゃっす! んじゃあ、三春出発ぅ」

「後でな」

 そのまま2人は出て行きました。ちょい、廊下で出会うスタッフがビックリしちゃうでしょうが。つつしみなさいよ。


 ドアがバタンと閉まると、

「ねぇ樹里」

 この顔は、良からぬことを考えてる顔だ。咲羅とちょっと距離を取ろうと一歩下がるけど、すぐに詰められた。

「私の背中、空いて――」

「お断りします」

「そんな即答しないでよ」

 どっかの芸人さんみたいな口調で言うな。あんたそんなキャラじゃないでしょうが。私の前でもキャラ崩壊してどうすんのよ。

 一歩下がって、また詰められて。なにこれ、いたちごっこじゃんか。

 気づけば楽屋をグルグルと一周していた。片足がソファに当たる、あ……終わった。

「もう逃げられないね」

 蠱惑的な笑みを浮かべ、両手をとられた。

「オーマイガー」

 結局、私は咲羅に背負われて楽屋内を5周ぐらいしました。

 解せぬ。

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