第21話 ライブに向けて1/2

2月25日(木)

 今日はフィオの1.5期生のバースデーライブがあったけれど、今回は見学をパスさせてもらった。

 なんてたって、ライブまで時間がない。多少『咲き誇れ』の練習に参加していたとはいえ、今までソロ曲にかかりっきりだったから、遅れを取り戻さなきゃいけない。

 しかも咲羅は完璧主義者だし。というのは表向きの理由で、本当は咲羅が

「フィオのバースデーライブとか興味ない」

 と言い放ったから。

 あまりにもハッキリ言うもんだから私は腹を抱えて笑っちゃったし、駿ちゃんも「ですよね~」って笑ってた。やっぱ身内には本性隠し通せないよね。自分が出てないステージなんて興味ないってこと、実は駿ちゃんもわかってるんだよ、咲羅。

 教えてあげないけどね。騙されたフリを続けてあげるよ。

 あと、駿ちゃんは貴女がRoseを卒業する気でいることも気づいてるみたいだよ。別に曽田さんから聞いたとかじゃなくて、「見てたらわかる」ってささ。

「これ、咲羅には内緒ね」

 って唇に人差し指を当てて言われました。彼も中々あざといですわ。キュン死にしそうになりましたわ。

 ま、私も最近は箱推しじゃなくて咲羅単推しになってるから、彼女が出ていないライブなんて興味ない。頑張ってる子たちには申し訳ないけど。

 そんなこんなで、私たちは今日も今日とて練習に励む。踊る度に彼女は改善点を見つけてくれるから有り難い。

 自分が咲羅よりダンスも歌も劣ってるって自覚してる分、頑張らなくっちゃね。翔ちゃんも頑張って練習に来てくれてるし。負けてられない。


2月26日(金)

 今日がバックダンサー9人が集まれる最後の日。先に練習を始めていた私たちに、歌番組に出演した後cinq5人が合流してくれた。

 咲羅も私もヘッドセットをつけて本番用の衣装を着て、本番さながらの――最早リハーサルと言っても差し支えない練習をする。次に全員が揃う本番。彼らは歌番組の生出演があるから、リハには参加できない。だからこそ、今まで以上に練習に熱がはいる。

 松岡先生だけじゃなく、咲羅はガンガンバックダンサーにダメ出しをする。年齢なんて関係ない。少しでもいいパフォーマンスをするために、咲羅に最高の復帰をプレゼントするために私たちはへこたれることなく、必死に食らいついてく。

 今まで練習を重ねてきたけど、その度に彼女は歌を自分のものにしていく。自分で作詞したから当たり前なんだけど、髪やスカート、マントのなびき方さえ自分で操っているようにしか見えない。

 動画ではポニーテールにしていたけれど、本番ではストレートヘアのままにする。その方がより咲羅の魅力が伝わるから、ってみんなで話し合って決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る