第19話 ソロ曲披露に向けて4/5

 そんなことを思っていると、

「折角だし、このままライブの打ち合わせしちゃおっか」

 駿ちゃんが立ち上がって、ホワイトボードにでっかく『案』と書いた。そうだよね、そろそろどんな風にパフォーマンスしたいのか詰めなきゃ。ライブまであと8日しかない。

「俺的には、咲羅にティアラ被ってもらいたいんだけど」

「え、やだ」

 即答かい! それでも駿ちゃんは①ティアラとホワイトボードに書いた。わあ、それ見たいわ。今までのMVでもライブでもそんなことなかったし。咲羅は

「私女王になりたいの」

 口をとがらせて言ってますけれども。

 どうすっかなあ。咲羅が乗り気じゃないなら廃案かな……でも見たい。

「じゃあ」

 駿ちゃんはめげずに、ティアラの下に矢印を書きながら

「最初はティアラ、最後に王冠を被るってのは?」

「ティアラ被ったまま踊るの? 邪魔でしょ」

 あんたことごとく駿ちゃんの提案潰していくな。

「んー」

 ほれ、駿ちゃんが困った顔してんじゃんか。でも、たしかに激しいダンスだからね、ティアラは邪魔かもしれない。

 そんな彼に加賀谷さんが助け舟を出した。

「最初に投げ捨てればいいんじゃない?」

「そっか。じゃあ、それで」

 いいのか、それで。

「OK! それだったら、今までのお姫様的な存在だった咲羅からの脱却、っていう感じになっていいね」

 ティアラと王冠用意しとくわ、と言いながら駿ちゃんは『決定』と大きな字で書いた。

 なるほど。お姫様からの脱却ね。歌詞とも合ってるし、女王になりたい彼女にとってはピッタリだ。

 『I'm the queen』って最初に言うことになってるから、ティアラはそれと同時に投げ捨てることになった。


「あ、私からもいい?」

「もち」

 咲羅が挙手をして、

「樹里をお姫様抱っこしたいです!」

「却下で」

 即答だわ、そんなもん。休憩中に散々お姫様抱っこして満足したかと思ってたのに、まだ足りないの?

「えー」

 そんな可愛く頬を膨らませても嫌です。

「無理無理無理」

「だって樹里のお披露目でもあるんだし」

「じゃあこうしよう。咲羅が女王で樹里ちゃんがお姫様って感じで、樹里ちゃんは最後にティアラを被る」

 加賀谷さんも乗っかるんかーい。

「樹里ちゃん、心の声漏れてる」

 おっと。心の中でツッコんだつもりが、声に出てたみたい。駿ちゃんに苦笑されちゃった。

「大丈夫、投げ捨てたティアラとは別のちゃんと綺麗なものを用意するから」

 そういう問題じゃないんですけど!?

 結局私の意見は無視され、ティアラを被せられることになりました。

 なんでだよ。

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