第6話 復活へ2/6

 ファンのみんなに見つからないために、最後の曲の途中で会場を出た。

 途中から思考はグチャグチャだったけど、久々のライブ楽しかったなあ。咲羅の言葉をわざと頭の隅に追いやって、ライブの高揚を胸に駿ちゃんの車に乗り込んだとき、咲羅が真剣な口調で

「駿ちゃんにお願いがあるんだけど……」

「ん? なになにぃ」

 シートベルトを締めながら駿ちゃんが振り返る。

「明日、事務所に美容師さん呼べるかな」

 車内が静まりかえる。

「さくちゃん、それって――」

「もっちー、大丈夫よ。連絡しとくから」

 笑顔で左手でグッドポーズをして、駿ちゃんは「それでは出発しまーす」と爆音で言った。

 相変わらず騒がしい人だな、と苦笑するけれど、この人の底抜けの明るさには救われる。

 おっと、それは置いといて。

「さくちゃん、大丈夫なの。ハサミだよ、ハサミ。美容師さんハサミ使うよ? ハサミだよ、ハサミ」

「わかってるって。そんな何回も言わないでも大丈夫」

 苦笑しながら私を見て、

「今日のライブ観てね、やっぱり私ステージに立ちたいなって思ったの。だから、そろそろ前に進まなきゃね」

 もうなんか泣きそう。まだ事件から1週間も経ってないし、あれがトラウマになっていてもおかしくないのに。たった16歳の少女は前に進もうとしている。

「もーなんで泣くのよ」

 泣きそう、じゃなくて、いつの間にか泣いていたらしい。咲羅が涙を拭ってくれる。

 だけど、余計に涙が溢れてきて止まらない。


「今のどこに泣く要素あったのさ」

「だってえええええええ」

 昨日とは逆だ、私が慰められてる。

「まあいいけど、好きなだけ泣きな」

 相変わらず苦笑のまま頭を撫でてくれて、

「あ、樹里にお願いしたいことが3つあるんだけど」

 反対の手で私の手を握る。

「にゃにぃ?」

 はて、3つ?

「1つ目は、明日からちゃんと学校に行くから、登校付き合って。2つ目は、学校終わったら、そのまま事務所でレッスンに付き合って。3つ目は、これからも当分私の家に泊まってほしい」

 どう?

 そう顔を覗き込んで、上目遣いで言われてしまったら。

「勿論」

 返事はそれしかございませんよ、お姫様。

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