第5話 貴女のためにできること3/4

 彼女が引きこもっている間、私は学校に行っていただけじゃない。ライブに向けてのフィオやRoseの練習にも参加してきた。

 いつの頃からか、咲羅に付き添って事務所にいると「観てるだけじゃ暇でしょ? 君も参加しな」と何故か私も練習に参加するようになって。


 私のお母さんも「駿太さんがいるから大丈夫でしょ」って、10代前半から毎日のように咲羅に付き添うことを、レッスンに参加することを許しいてくれている。寛大というか、放任主義というか……。

 そんなこんなで、私は研究生みたいなことになってる。

 いや、元々事務所箱推しだからフィオやRose全員分のフォーメーションとか振り付けとか覚えてるんですけどね?

 だけど今回は咲羅のために、彼女の立ち位置で動画を撮りながら練習に励んだ。

 どうせ練習風景は動画投稿サイトの公式チャンネルにアップされるんだろうけど、それだと詳細がわからないし、切り取られてるし。

 私ができることって、これぐらいだから。

 そう言うと咲羅は、

「ありがとう」

 優しく笑ってくれた。


 その動画はまた明日にでも観よう、そう言って私は彼女をお風呂へと突っ込んだ。いくら夏場じゃないとはいえ、3日間もお風呂に入ってなかったんだから、それなりに不快なはずだ。いろいろと。


 スマホに撮り溜めた練習動画を観ながら、咲羅のこれからを考える。

 漸く部屋から出てきてくれたけれど、28日のライブには出られるだろうか。駿ちゃんから伝えるように言われていたことは伝えたけれど、反応は

「そう」

 二言だけだった。

 だから彼女がどう思っているのかはわからない。

 今まで調子の良いときも悪いときも見てきた。私は彼女が復活できるって信じてるけど、もうファンの前に立てないのではないかという不安が胸に渦巻く。


 グダグダと考えていると、駿ちゃんからメッセージが入る。

《31日、蘭、綾菜、希美のバースデーライブ見学に来ない?》

 駿ちゃんには咲羅の状況を頻繁に伝えていたから、やっと部屋から出て来れたと知ってのお誘いだろう。

 フィオもRoseも毎月、大体月の終わりぐらいにキャパが700人ぐらいの小規模で、時間は1時間だけ、メンバーのバースデーライブを行ってる。今回のはRoseのメンバー3人。

 そのライブだけは、お誕生日メンバーがセンターに立てる。1時間だけでも、その瞬間だけは彼女たちだけがメインなのだ。

 私も普段だったら抽選に当たれば参戦してるけれど、咲羅は大丈夫かな……。人込みとか。

 そう返信すると、

【観客席からじゃなくて、舞台袖からなら、まだいけるんじゃないかな。ちょっと聞いてみて】


 もうスマホは本人に返したって言ってるのに、なんで私に言ってくるかなあ。別にいいんだけど。信頼されてるってことだろうし。私から話した方がいい、っていう駿ちゃんの判断なんだろうし。

 でも、この話も明日にしよう。今日は出てきてくれただけで十分だ。

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