第10話 相談部 活動の場合Part3

「麦茶と後は・・・、夏宮と俺はカナリスエットでいいかな??」



今頃夏宮と古川が偶然にも会っている事など全く持って露知らず。


ガコンと落ちたスポーツ飲料水を手に取り、余った小銭をポケットへと突っ込んだ俺はよっしゃ戻ろーっと急いで踵を返した時だった。



「ありゃりゃー・・・。どうしましょうかー・・・?」



どこか困り果てた声が、俺の耳に届いたのである。


思わず足を止めて、周りをキョロキョロと見渡しては見るものの、人の影などは無く。



勘違いかな??最近色んなことがあって疲れてるんだ・・・!!ああそうだ週末銭湯かはたまた遠出して温泉にでも行こうか・・・・。などジジ臭い事を考えている時だった。



「あ、あのーよろしいですか?そこの方もしよろしければ私をここから下ろして頂いてもよろしいでしょうか・・・?」


それは上から聞こえて来たのである。


何故に上から声がするんだ!!まさか幻聴か!?!?と思わず見上げてみると・・・、そこには牛がいた・・・!!!



いや失礼・・・、そうじゃないんだ。

決して彼女の一部が牛様のような発育をしているからといって、別にそんな意味で言ったわけでは・・・・、


すいません。


心の中で深く深く謝罪の言葉を述べた俺は、そっと何故だか木の上にいる少女、いや美少女の姿を目に写す。


特に目に引く物は置いておいても、その少女の姿はまさに可憐と言う言葉が最も似合っているだろう・・・。


そうそれは例えるならば妖精とかだろうが、彼女の場合はもっと別の・・・、そう聖女と言う言葉が一番しっくりくるそんな容姿。


手入れのなされたサラサラの薄桃色の髪が、陽の光に反射し俺は思わず目を細めた。



「えっと・・・、ツッコミどころが色々多すぎて混乱しているから少し待ってくれ??」

「えっと・・・?出来れば早く助けていただけると助かります」



それは至極最もで・・・!!


まあそれを全部脇に置いてたとしても・・・、しかしだ一体この状況をどうしようか??


「やるとしたら梯子持って来てそれで降りるか、俺が受け止めるか、それか自力で跳んでスーパーヒーロー着地を決めるかの3択だな・・・・!!」

「最初の2つは納得しましょう・・・、ですがあとの1つは何一つ意味が分かりません!!」



ちょっと怒りながら叫ぶ彼女だったが、その反動で身体を動かした所為か枝がギシギシと揺れてしまう。



「ひうっ・・・・!!」


そしてそれと同時に彼女の豊満なふたつなぎな秘宝が・・・・!!!



「・・・・・!!!ありがとうございます!!」


思わず出てきたその言葉に少女はキッと頬を染めながらこちらを睨みつけ、


「い、一体どこ見てるんですか!!は、早くここから下ろして!!」


やべまた心の声が出てしもうた。


今は心を落ち着かせる為素数を数えよう・・・! 2,3,5・・・・・、


そう俺は紳士だ・・・!!俺は完璧なる紳士となるんだ!!




「は、早くして下さい・・・!!」

「分かった分かったよ。今から下ろすから・・・、梯子の方がいい?それとも俺が受け止める??それかスーパーヒーロー着地しちゃう???」

「まだそのネタ引っ張りますか!?梯子!!梯子でお願いします!!」


何だ梯子か1番つまらないじゃない。


「なんでそんな不服そうな顔をしてるんです!?」


「ここは1度スーパーヒーロー着地を試すのはどうだろう・・・??まあこの高さじゃ流石に無理か・・・、せめてビルの屋上で飛び降りないと・・・」

「飛び降りませんよ!?いいから普通に降ろしてください!」


そう言って俺のジョークを彼女は腕を上げて抗議しようとしたその瞬間、彼女の身体を支えていた枝が折れてしまったのだ。


「えっ・・・!?きゃああぁぁぁ!!!」


悲鳴を上げながら落下する彼女を、俺は慌ててその下へと潜り込むと落ちてくる彼女をしっかりと支え、無事にキャッチする事に成功した。


「まさかそこで枝が折れてしまうとは・・・。どこか怪我はないか?」


俺が優しく声を掛けるが彼女はブルブルとまだ震えている。


気づいてない??


「おーい、大丈夫か~」



彼女の顔を覗き込むようにして確認する。

すると彼女は目を大きく見開き俺の顔を見つめ・・・、


「きゃあああああああ!!離れてください!!」


大きな声を上げながら右頬から強烈な衝撃が俺を襲う・・・!!


げ、げんきでづかあああああ!!


あまりの痛みに、思わず彼女を離してしまいそうになるのを何とか堪え。



大きくそれは大きな息を吐き出した俺はそっと彼女を地面に下ろすと。



「な、中々にいいパンチだったよ・・・!!そ、それじゃあ・・・!!」


プルプル震える顔を押さえながら、少し気が動転した俺は彼女に向かって親指を上げサムズアップ。


どうしよう泣きたい・・・!!!


既に涙目になっている事にも気付かず、それじゃと踵を返し投げ捨てたペットボトル達を回収してその場を去ろうとしたが・・・。


「ま、待ってください・・・!そ、その受け止めてもらったのにも関わらず思いっきりビンタしてしまい。も、申し訳ありませんでした・・・!!」


後ろを振り向くと彼女が深々と頭を下げていた。



「いや・・・、気にする必要はない。これはお互い不幸な事故だったんだ。それに女性を助けるのは当然さ・・・!!」

「まあ色々とそちらの所為でもあるとは思いますが・・・。それでも助けてくれた事に違いはありませんから・・・。本当にありがとうございました・・・!!」


そう言ってもう一度深く頭を下げる彼女に、俺はいやいやと手を振って今度こそその場を離れようとするが、服を捕まれそれは阻止されてしまう。



「あ、あの!失礼ですが噂の新山 陸さんですよね?相談部に所属している」



待って欲しい夏宮の時もそうだったが・・・。噂、噂って一体どんな噂が広まっているのかなあ!?



「えっと・・・、どんな噂か知らないけど・・・。相談部の新山は俺ですが??」

「やっぱりそうなんですね・・・!」



パンッと彼女は両手を叩き、未だ痛みで涙目になっている俺を下から上までじっくりとまるで品定めでもするかのように視線を動かし、


「なるほど、あなたがあの・・・」


何かを納得したように何度もうんうんと首を縦に振った。

そして彼女は俺の顔をジーッと穴が空くのではないかと思うくらい見つめてきたのだ。


え・・・?な、何!?何で!?何で俺の顔ばっか見てるのこの子!!


「ふむ、これは確かにの言っていた通りイケメンです!!イケメンすぎます!!」


「はい?」


彼女が小さくボソボソと言った言葉が聞き取れず、思わず聞き返してしまった。

すると彼女ハッとした表情になり、慌てて顔の前で手をブンブン振りながら、


「いえ!!こちらの話なのでお気になさらず!!それよりもです!!私、陸さんに少し相談事があるんです!!」



「ん?相談事?」


どうやらこの美少女は依頼者のようである・・・。



「相談事なら喜んでのるけど・・・。その前に先ずこれ置いてからでもいいかな?」



そう言って抱えた麦茶とカナリスエットを彼女にみせるが、そんな話知らんとばかりに近付いた彼女はグイッと顔を寄せてくる。


やめて欲しい・・・。さっきもこの近さで打たれたのに・・・!変な性癖に目覚めても知らないよ!?!?


「じ、実はですね!」

「いやだからこれ置いてきても」

「私実はかれ・・・、いえ男性のお友達と帰る予定だったのですがはぐれてしまいまして・・・」



かれ・・・?なんだ?一体何を口にしようとしたんだ??

俺は気になりつつも彼女は俺の話なんて聞かないだろうと諦め、大人しくその男友達?を一緒に探すことにした。



「まあいいや・・・。それでどこではぐれたの?」

「あーえっと、下駄箱の所ですかね?」

ええ・・・。



そんな序盤のところからハグれたのかよ!!

それなら相手は下駄箱ら辺で探しているかもしれないな・・・、



「てか木に登ってたのもそれが原因な感じ?」

「はい!そうなんです!」



元気よくまるで聖母マリアが微笑むようにいい考えでしょう!!と笑顔でそう答える彼女を見て、俺は思わず頭が痛くなったように額に手を置いた。

それで降りられなくなったら本末転倒だろうに・・・。

この子はあれだ俺のあくまで予想だが、天性のドジっ娘特性を取得しているのかもしれない・・・!!



「どうしました?」



まあ兎にも角にも・・・だ。

とりあえず下駄箱に行ってみるしかあるまいて・・・、


「とりあえず先ずは下駄箱ら辺へ行ってみようか・・・」

「そうですね!行きましょうか!」



元気よくそう返事した彼女は先導するように歩こうとするが、俺は思わず天を仰ぐ。



「えっと下駄箱のある校舎は反対側だな・・・」

「あ・・・。え、えっとご、ごめんなしゃい!!」



噛んだ・・・!!

ああー。これ正解のやつかもしれん・・・。



「ま、まあ気を取り直して行こうか・・・。俺が先導するよ・・・」



そうして俺が歩き出すと頬を真っ赤に染めた彼女はちょこちょこ着いてくるのだが・・・、何故俺の真横に並んでついてくるんだこの子は!!


しかも距離ちっか!!


「え、えっとそういえば名前聞いてないよね?」

「そうでした!私は真央まおって言います!よろしくお願いしますね陸さん!」

「へ、へえ・・・。真央・・・、真央さんかあいい名前だねえ」

「え!そ、そうでしょうか?そ、そんな事初めて言われました!!」


何処かニマニマとする真央さんを尻目に、俺は真央・・・、真央??。とここ最近何だかそんな名前を誰かから聞いたような、聞いてないようなと頭を悩ませる。


てかい、いきなり陸さん呼びだと!?


彼女の容姿で名前呼びなどされてしまえば、そこら辺にいる一般の男子生徒は俺に気があるのか・・・!と勘違いして絶対に好きになるヤツやん・・・!!


「ふへへ・・・!!所で陸さんは部活ですか?」

「うん?まあ今日は事務の菅野さんに頼まれて花植えを手伝っていたんだ」

「へえ・・・!!奇遇ですね!私の親友も今日お花植えするって言ってました」


ほー・・・。物好きも居たものだ。おそらく委員会かなにかだろうな・・・。


そんなたわい無い会話を数度やりとりしているといつの間にか下駄箱までたどり着く、そして辺りを見渡してみるが特にそれらしき人物は見当たらない。



「いないな・・・。どこかに探してるとかありそうだな」

「う~ん。どうなんでしょうか?」



俺に聞かれても分からんて・・・。




「そうだその男子生徒の人の特徴は何かない?」

「特徴ですか?えっと身長は175cmあるかないくらいだった気がしますね!」



ふーん180ちょっとの俺より小さいな・・・。



「えっと他には・・・?」

「髪の色は灰色ですね!」



灰色・・・・・??

ちょっと待て??つい最近そんな髪型の奴に何か絡まれた記憶があるぞ??

まさか・・・な、いくら何でもそんな偶然有り得ないだろう・・・。



ありえないよね??



「なあ真央さん・・・。そいつって何処か平凡顔で髪が目元まで伸びてはいないかい??」

「ええ!!よく古川くんの容姿が分かりましたね!!」



妙に目をキラキラしながら興奮するように手を振る彼女・・・。

や、やっぱりかああぁぁ!!!

俺は心の中でそう叫んだ。叫びまくった!そしてこの子が何故彼を探しているのか理由も直ぐに導かれる。



「真央さん。1つ聞こう・・・。君ってまさか苗字が春日和はるびよりじゃないよね??」

「わあ!!陸さん私の事知ってるんですね!!そうです私は春日和はるびより 真央まおと言います!!」



なんてこったい・・・!!

俺は何度目か分からないが顔を天へと向け、猛烈に彼女を置き去りにして帰りたい気分となってしまった。


てかなんで今まで気付かなかったんだろうか・・・。数分前の自分を殴り倒したい!!


薄桃色の髪に可憐な容姿と言えば、学園では1人しか居ないというのに・・・!!


七姫の1人であり、「百合姫」の2つ名を持つ 可憐という言葉が体現された様な少女 春日和 真央 ・・・。



夏宮 瑠奈が最近負けヒロインとなってしまった原因でもあり、なおかつ俺へ敵意剥き出しの少年 古川 界人 の彼女の名でもあるそんな少女は・・・。


目の前の彼女その本人だったのである。

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【祝1000pv!!】負けヒロインじゃあダメですか!? キュータロー @kyuhisa

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