あいぼおおおおおおおおおおおっ!!
「……………」
「大丈夫か?」
「……えぇ」
朝、起きてから刹那の調子がおかしい。
既に相棒は刹那の体から離れているようだが、おそらく昨晩に何かがあったのは間違いない……まあ、相棒を抱いて寝た時点で何かあったのと変わらないのだが、それにしても顔が赤いのが気になる。
「……………」
俺も寝る直前に何かあったのか聞こうとは思っていたけれど、こうなってくると何も聞かないのが吉のような気もする。
朝食の時間、チラチラと見つめてくるのは……いやいや、流石に気になるだろ!
「……なあ刹那、マジでどうしたんだ?」
「……………」
刹那は変わらず沈黙を保つが、俺をジッと見つめることは忘れない。
おい相棒、何をしたんだ……? そう聞いてみるが相棒の返答はナシ、俺は小さくため息を吐いた。
流石に沈黙が続くのはどうかと思ったらしく、刹那が口を開いた。
「その……本当に気にしないで大丈夫よ。これは私と彼女の問題だから」
「相棒と?」
「えぇ……全くもう、あんな提案をされるなんて――」
それからブツブツと刹那は呟いていた。
こうなってくるとやっぱり気になってしまうものの、刹那と相棒の間で話が完結しているのなら聞いても仕方ない。
気にはなるけどな!
「なあ」
「うん?」
学校に着いてすぐ、真一が声を掛けてきた。
内容としてはボーッとしながらも、どこか考え事をするように腕を組んでいる刹那を見てのことだろう。
俺が気になるだけでなく、同じクラスの真一すら気になるほどなので……うん?
「どうした?」
「……いや」
刹那のことを考えているとここに来てようやく相棒が反応した。
相棒としてもどうして刹那があんな風になっているのか本気で分からないみたいだが、俺は間違いなく相棒に原因があると思っている。
失敬な、そんなことがあるか、少し提案をしただけだと言い張っている相棒にじゃあその提案はなんだと問いかけると何も言わないのだから、やっぱり相棒に原因があるんじゃないかと考える他ない。
とはいえ、結局放課後になる頃には全く気にならなくなっていた。
刹那もその頃には完全に何かを気にした様子もなく、前日と同じくダンジョンに入った後に関してはいつも通りその手に握った剣で無双していた。
「ふぅ」
「お疲れ刹那」
しかし、いつも以上に体を動かしているのは確かだった。
タオルで汗を拭いていると、まだまだ動き足りないと言わんばかりに刹那がぴょんぴょんとジャンプをしてから再び魔物の群れに飛び込む。
「……わ~お」
そんな声が漏れるくらいに刹那の動きは鮮烈だった。
しかも天使の翼も使いながら剣術と速度で敵を圧倒していく……俺は自分の戦い方を客観的に見るようなことはないため、こうして他人の戦いを眺めているのは中々面白いなと思う。
刹那ほどの実力者ともなるとその強さも折り紙付きだし、動きに一切の無駄がないからだな。
「でも……なんであんなに頑張ってるんだろうか」
無理をしているわけではなく……なんだろうな。
体を動かして疲れさせようとしている……? 取り敢えず、刹那の動きを見守りながら後で話を聞くことにしよう。
「最近はまた平和になったし……悪くないねぇ」
明後日くらいには例の事件の背景について分かるかもしれないと聞いたが、まあ今はこの束の間の平和を味わおう。
それから俺も体を動かしたくなって刹那と一緒に魔物を狩った。
ダンジョンを出てから組合に向かい、換金諸々を終わらせてから家に帰ると刹那は相当に眠たそうだった。
「凄い眠そうだな?」
「えぇ……体を動かし過ぎたわね。ごめんね瀬奈君……理由は明日にでも話すわ。今日は簡単なモノで大丈夫?」
「全然良いぜ。というか手伝うよ」
「ありがとう……何にしようかしら」
「湯豆腐は?」
「良いわね。決まりだわ」
気温も低くなってきたからなぁ……ということで、すぐに用意だ。
いつもは凛々しくテキパキと家事を熟す彼女も、眠気との戦いみたいで俺としてはハラハラだ。
なので今日は俺がメインとなって夕飯を用意する。
まあ湯豆腐なので難しいことはない。
「……はっ」
「あはは……」
火傷とかしないでくれな?
夕飯の後は風呂も済ませて俺たちは寝室に向かう。
「すぅ……すぅ……」
ベッドに横になってすぐに刹那は眠ってしまった。
まだ9時くらいなのもあってかもう少し話でもしたかったなと思いつつ、俺はしばらくスマホでも弄ってから寝ようかと思った。
ただ……SNSで色んな人の投稿やニュースを見ていると、ゴソゴソと刹那が動いたのだ――目を覚ました彼女は起き上がり、ハッキリとした目線で俺を見据える。
「……?」
しかし、俺はそんな刹那に違和感を覚えた。
ジッと見つめてくる彼女はいつも通りの姿……だというのに、どこかおかしいと感じてしまった。
「っ!?」
その違和感を考えていると、突然に刹那から濃厚なキスを交わされた。
舌を入れてくる激しいタイプのキス……ただ俺も男なので、彼女に応えるようにこちらからも舌を使っていく。
しばらくそんなキスを続けた後、顔を離した刹那は顔を赤くしながら……ニコッと微笑んだ。
「うむ。悪くないなこういうキスも……ふふっ」
「……え?」
その喋り方……聞き覚えがあるぞ!?
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